2020年02月21日 1613号

【ドクター 新型コロナウイルス 今言えること】

 WHO(世界保健機関)は2月4日、中国武漢で始まった新型コロナウイルス流行に関して声明を出しました。世界的流行(パンデミック)ではなく、ウソ情報の流行(インフォデミック)が問題。マスクは自分への感染を予防できないなど、情報や政策は科学的根拠に基づくべきとしています。まるで、マスクを買いあさらせたメディアや危機感ばかりあおる日本政府への批判かのようです。

 事態は進行中ですが、今最低限言えることは何かをおさえておきましょう。

 コロナウイルスは、「かぜ」の原因ウイルスの2位です。ところが、同ウイルスによる「SARS」は03年、中国から世界に広がり8098人が感染し774人(10%)が死亡、「MERS」は12年に中東で発生し2494人が感染し858人(34%)死亡しました。これらは無茶苦茶高い死亡率で恐ろしい病気です。

 今回、2月7日現在中国の感染者3万1481人のうち638人(2%)が死亡しています。しかし、この感染者はおそらく強い症状が出て検査した人たちで、多くの軽症者が感染者として数えられず、実際の死亡率はより低いものと思われます。武漢のある湖北省以外の中国全体の致死率は約0・16%。中国以外では、感染者284人中死亡者は1人(0・35%)です。

 中国政府機関の発表では、死亡者の80%が60歳以上、75%が脳梗塞や糖尿病などの持病を持っていたとされています。これは、世界的な医学雑誌に報告された、初期の死亡者17人の分析結果と矛盾しません。他方、重症41人の報告では年齢は41〜58歳、持病も持たない人の割合68%との論文もあり、いまだ確定的な判断には至っていません。

 中国でのインフルエンザによる死亡は人口の0・01%程度で、感染率10%とすると感染者に対する死亡率は約0・1%です。新型コロナウイルスはインフルエンザよりは強い毒性を持つ流行病だと考えられます。

 09年のインフルエンザ・パンデミックでは、政府も学会もWHOも非科学的情報を流し、タミフルを世界中に売り込み、日本では集会禁止事項など含む反民主的特別措置法が作られました。今回も、抗ウイルス薬開発や改憲策動に利用しようとの動きもあります。

 科学的根拠に基づいた情報提供と人権侵害ではなく本当に市民の利益になる対策が求められています。

(筆者は小児科医)
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