2020年03月06日 1615号

【新型肺炎 感染拡大は人災だ/事態を悪化させた安倍の隠蔽体質】

 新型コロナウイルスの市中感染が広がっている。政府が「水際作戦」のPRに使った大型クルーズ船では集団感染が発生、死者まで出た。これは人災である。政権維持を最優先し、都合の悪い事実を覆い隠す安倍政権のふるまいが事態を悪化させたのだ。

集団感染が発生

 大型クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号で新型コロナウイルスに感染した乗客2人が死亡した。2人とも80代の日本人。同号の乗客は重症化しやすい高齢者や持病のある人が多く、十分な医療設備のない船内に留め置くことの危険性が指摘されていた。その懸念が現実のものになった。

 乗客は口々に「船内はいつ感染してもおかしくない状況だった」と証言している。ある米国人男性は妻が感染し、部屋の世話係だった乗員が重症化した。医師でもある彼は「私たちはウイルス培養皿に入れられて、感染させられているのと同じだ」と憤る。

 感染症対策が専門の岩田健太郎・神戸大学教授は、感染の危険がある区域と安全な区域が明確に区別されていないと告発する動画をネットに投稿した。NHKの取材に対し「政府が専門家の意見に耳を傾け対策を徹底していれば、ここまでの事態にならなかったのではないか」と訴えた。

 2月20日現在で、約3700人の乗客乗員のうち634人が感染。重症者は28人(厚生労働省発表)。検疫官や政府職員、救急隊員にも感染者が出ている。感染防護策がずさんだったことは明らかだ。

対策会議より宴会

 それでも厚労省は「全体としては感染拡大防止の措置は有効に機能している」と強弁する(2/20)。橋本岳副大臣は自ら撮影した船内の写真をSNSに上げ、岩田教授に反論した(「不適切な隔離の証拠となる写真」と指摘されると、あわてて削除した)。

 安倍晋三首相は亡くなった乗客に哀悼の意を示した上で、「今後も対応に万全を期していく」と語った。「今後も」とは何だ。政府がいつ「万全な対策」を講じたというのか。

 国内で初めて新型肺炎の患者が確認されたのは1月15日のこと。内閣に安倍首相を本部長とする「新型コロナウイルス感染症対策本部」が設置されたのは1月30日である。初動が遅すぎるし、対策本部の実態もお粗末きわまりない。

 全国紙のある記者はこう語る。「1回の会議時間は10分から15分ほど。何かを議論して決める場というより、出席した閣僚や官僚が用意したペーパーを読み上げるだけ。そして安倍首相がペーパーを読む姿をマスコミのカメラに取らせる場になっていました」(2/18女性自身WEB)

 対策会議には10分程度しかいない安倍首相だが、自分の支持者や御用メディアを接待する時間はしっかり確保している。たとえば、第9回の会議(安倍首相の出席時間9分)が行われた2月14日には、日本経済新聞会長らと2時間48分にわたる会食を行った。

 死亡者が出た2月20日も、極右タレントや取り巻き議員との宴会に興じていた。本部長の首相がこのありさまでは、地元後援会との新年会を優先した小泉進次郎環境相など、対策会議を欠席する閣僚が相次いだのも必然といえる。

支持率急落は当然

 「やってる感」の演出には熱心だが、問題の根本には目を向けない。政策や対応の誤りを指摘されてもかたくなに認めない。口封じや証拠隠滅で責任回避を図る。保身に走る官僚はイエスマンと化し、メディアは本当のことを報じない―。

 新型コロナウイルスの件で今起きていることは、第二次安倍政権5年間の縮図である。クルーズ船の乗客を下船させる方針に突然切り替えたのも、批判のやり玉となっている「クルーズ船問題」を「抹消」したかったからではないか。「桜を見る会」を中止したこととよく似ている。

  *  *  *

 2月中旬に実施された世論調査において安倍政権の支持率は軒並み急落した。嘘つき・隠蔽の常習犯に支配された国は機能不全に陥り、人びとの生命・安全がないがしろにされている。その事実はもう隠せない。

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