2020年08月14・21日 1637号

【MDS コロナ危機を克服し社会を変える18の政策 ≪第2回≫ 雇用と労働 労働者は使い捨て商品ではない】

 「労働者は使い捨て商品ではない」―この標題は、グローバル資本主義の中で、多くの労働者が使い捨てられている実態を告発するものである。

 コロナ危機は、医療、介護、教育、清掃、農業、小売業、輸送業などが、私たちが基本的な生活を送るうえで欠かせない分野の仕事(エッセンシャルワーク)であることを浮き彫りにした。これらの仕事の多くは女性によって担われているが、その社会的な重要性に比してわずかな賃金しか受けとっていない。

 独立行政法人労働政策研究・研修機構が2016年に16産業別にまとめた調査によると、国が最低賃金近くで働く労働者と位置付ける「最低賃金の1・15倍未満」の占める割合は、宿泊・飲食サービス業が39・9%と最も高く、卸売・小売業22・7%、医療・福祉6・6%など、生活に必要不可欠な労働分野の職種で高かった。

最賃据え置きの答申

 ところが、中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)は7月22日、2020年度の地域別最低賃金の目安について「現行水準の維持が適当」として据え置きとする答申を決めた。据え置き答申は、リーマン・ショック後の2009年度以来だ。新型コロナの感染拡大による経済情勢の悪化を考慮したという。

 この目安に基づけば、各地の最低賃金は現状のままとなる。現在最も低い青森、島根、高知、鹿児島など15県が790円。東京都との差は223円であり、あまりに大きい。全国加重平均でも現行は901円で、月額にすれば13万円程度だ。だが、「ふつうの暮らし」「あたりまえの生活」に必要な費用(25歳男性、賃貸居住で試算)は、日本のどの地域においても税・保険料込みで月額約22万〜24万円。誰もがこの賃金を確保するために、最低賃金は全国一律時給1500円以上が必要である。

 中央最賃審の目安に関する小委員会では、引き上げ凍結を主張する経営者側と引き上げ継続を求める労働者側が対立。大学教授らでつくる公益側委員が「引き上げが雇用調整(解雇)の契機とされることは避ける必要がある」などとして、据え置きを妥当とする見解を出した。これは、6月に安倍首相が「官民を挙げて雇用を守ることが最優先課題だ」と引き上げを実質否定する姿勢を示したことに応えた政権忖度(そんたく)答申に他ならない。

原資は十分ある

 いま、エッセンシャルワーカーに対し、賃金を増額し、危険手当を新設し、健康を維持できる人員補充を実行することが求められている。2018年の企業の内部留保金は463兆円もあり、これをはき出させれば、原資は十分ある。にもかかわらず、コロナに便乗して賃金を抑制するなど言語道断だ。

 私たちは、最低賃金引き上げも雇用の維持もどちらも譲らない。イタリアの医療労働者は、安全対策を求めてストライキで闘う中で「コロナ下での解雇禁止」政労使合意を勝ち取り、世界中に波及させた。日本でもコロナ下における解雇禁止法制化を勝ち取る闘いが求められている。

 コロナ感染防止を大義名分に、在宅のテレワークが一挙に拡大された。テレワークは、高度プロフェッショナル制度や裁量労働制度と同じく、残業代ゼロを加速させ、過労死の温床となる。グローバル資本とその代弁者である安倍政権は、テレワーク推進をステップに、労使関係から雇用契約を抜き取り、請負契約にして必要な時に必要な労働力を使い必要がなくなれば契約を解除できるという社会を創出しようとしている。

 グローバル資本主義は、労働者を使い捨てにすることで莫大な内部留保をため込んだ。さらに、派遣労働を拡大し、請負・委託契約の拡大を通じて労働法なき社会をめざしている。

 私たちは、民主的な地域ユニオンを建設し強めることを通じて、これに対抗し、労働者の権利を守り拡大する闘いを前進させる。

 
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