2020年10月02日 1643号
【MDS コロナ危機を克服し社会を変える18の政策/《第5回》 地方自治 人権・自治・平和が息づく 地域と暮らしを実現する】
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憲法の3大原理(主権在民、平和主義、基本的人権の尊重)を地方政治において実現する。これが私たちが求める自治体の役割だ。
しかし、現状はそうなっていない。自治体当局は、政府の新自由主義政策に従い、民営化、公共施設の削減・統廃合、経費や人員の大幅削減をすすめ公共サービスを貧弱なものにしてきた。この貧弱な公共サービスが構造的要因となって、命と生活が脅かされるコロナ危機をもたらしている。
55万人の職員大削減
歴代自民党政権は、1990年代半ばから「行革」の名の下に本格的に公共サービス削減を推進。全国の自治体に対し、職員や賃金の削減、事務事業の再編統合と民間委託推進を強要し、公共サービスに競争原理を導入し、民営化推進を指示した。結果、全国の自治体職員は94年の約330万人から18年までに約55万人削減。中でも2005年からの6年間だけで「集中改革プラン」として23万人もの大削減となった(左のグラフ)。これでは市民の多様な要求や相談に応えられるはずもなく、災害などの非常時に十分な対応は不可能だ。
安倍政権の「骨太方針2015」は、グローバル資本のもうけのために「歳出規模も大きく、かつ国民生活に深くかかわる社会保障サービス・地方行政サービス」など「公共サービスの産業化」を打ち出した。
その推進のため、自治体に対し地方交付税や各種補助金などを民営化達成度に応じて配分する「成果主義」で政策誘導し、全国で保育所・図書館・病院・上下水道・各種窓口などの民営化が進められている。さらに18年に「自治体戦略2040構想」を発表し、自治体から自治を奪い、公務員を半減し、公共サービスは民間企業で行なわせる新自由主義的な自治体・地域再編に本腰を入れている。
狙われた保健所・病院
公衆衛生分野では、地域保健法(94年)と小泉構造改革の中で、全国の保健所数は92年の852か所から20年の469か所に大きく減少し、そこで働く医師数は1173人から728人に、臨床検査技師数も1353人から746人に削減され、保健所の数だけでなく機能も弱体化した。07年には「公立病院改革ガイドライン」で、経営の効率化、病床削減と独立行政法人化(実質民営化)推進を自治体に求めた。
14年には「医療介護総合確保推進法」によって「地域医療構想」が制度化。18年までに全国で15万6千床が削減の対象となった。このターゲットになったのが、公立・公的病院だ。政府は、19年9月に地域医療構想で削減対象として感染症対応の53病院も含む424の公立・公的病院をあげた。現在、全国の感染症病床の64%は公立病院だ。新型コロナウイルス治療の最前線で奮闘している病院を削減するというのだ。感染者の療養のためのホテル借り上げや既存病院を専門病院に変えることはしても、病院や保護隔離施設の新設は絶対にしないのはこのためだ。政府に市民の命をまもる気はない。
政府の規制を突破
今、地域・自治体での対抗軸は、市民の命、人権と生活をまもるため「公共を取り戻し」公的責任を果たさせるのか、様々な公共サービスを国内外の大企業の「私的利益の対象」とさせてしまうのかである。
自治体は、憲法25条「健康で文化的な最低限度の生活」を、地方自治法第1条の2「住民の福祉の増進を図る」に基づいて、個々人に保障する責任がある。コロナ対策を求める市民の闘いは、自治体を動かし政府の規制を突破し各地でPCR検査拡大を実現させ、市長会や知事会をして検査拡大や公立病院支援、市民生活補償のための財政出動などを政府に要求させている。
自治体の国家への従属と地方自治解体、公共の放棄、民営化推進という政府の新自由主義政策から市民ひとり一人の命と人権、生活をまもるために、病院・保健所をはじめとした公共施設の拡充、自治体職員増員と地方交付税増額など自治体への大幅な財政出動をさせなければならない。今闘いを強めればそれは可能だ。
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