2023年09月08日 1787号

【辺野古裁決取消訴訟/最高裁 沖縄県の訴えを退ける/欠陥工事は承認撤回≠セ】

 沖縄県辺野古新基地建設をめぐり、国土交通大臣は「設計変更不承認」とした沖縄県の判断(2021年11月)を覆そうと不当な介入をおこなった。沖縄県がこの介入は違法だと訴えた裁判で、最高裁判所は県の主張を退けた。「法の番人」とされる最高裁は政府が法を捻じ曲げ、地方自治を破壊し、違法工事を繰り返すのに手を貸したのだ。

 県の訴えは2つ。国交大臣が行政不服審査法を誤用して県の不承認処分を取り消す裁決をしたこと、また地方自治法を悪用し県に是正指示を出したこと―このいずれも違法であり、取り消すべきだと主張した。最高裁は8月24日、裁決取り消しの求めを受けつけないことを決定、是正指示の取り消しについては9月4日に、福岡高裁の判断を追認し県の主張を退ける判決を言い渡す構えだ。

自治も法も破壊

 経過を確認しておこう。

 辺野古新基地建設は、公有水面埋立法(公水法)の免許(国の場合は承認)を得なければ、工事ができない。この免許(承認)を与える権限は都道府県にある(法定受託事務)。建設工事は13年に承認されたが、軟弱地盤対策が抜けていたため、完成できないことが判明した。沖縄防衛局は計画変更の承認を20年4月、沖縄県に申請した。

 ところが、この計画もまた杜撰(ずさん)なものだった。県の質問に沖縄防衛局は答えられず、構造物の安全性、環境保全への疑問は残ったままだった。翌21年11月、玉城デニー知事が欠陥のある設計を不承認とした。

 要するに、沖縄防衛局がまともな工事計画書を提出していないことが今回の争点だ。安全な工事ができるかどうか、これに尽きる。

 これを国交大臣も、最高裁も「問題ない」としたのだ。特に、一連の政府や司法の判断には、行政や地方自治の根幹を揺るがす重大な誤用、歪曲を含んでいる。

 まず、行政不服審査法を意図的に誤用し、国交大臣が県の審査権限を無効にしてしまったことだ。県は国交相が定めた公水法の審査基準に基づき、不承認とした。沖縄だけ独自の判断をしたわけではない。どの都道府県であっても不承認となる内容だったのだ。

 ところが、国交相は沖縄県の判断を「裁量権の濫用(らんよう)」と否定した。基礎地盤の固さを示す数値を求めた県の要求はやりすぎだというのだ。防衛局が「安全だ」と言ってるから、それ以上言うなということだ。最高裁も国交相を支持した。

 2つ目は、地方自治法の根幹である国、地方自治体の対等関係を認めず、自治権を否定した点だ。

 国、地方に意見の相違があるときは対等な立場で協議を行うよう地方自治法は改定されたが、国に関与の余地を残した。国はいつも正しいとの前提であり、無法を働くなど想定してないからだ。結局、この条項を悪用し沖縄県の判断を覆した。なおかつ、地方自治体は司法に判断を求めることができないとしている。国の誤った法解釈がまかり通るのだ。

県の判断は正しい

 玉城知事は「県の判断に誤りはない」と語っている。政府や司法が、どう言おうとも埋め立て予定地には軟弱地盤が存在する。安定した地盤ができることを確かめもせずに工事を始めることなどありえない。県の判断は正しい。

 問題は軟弱地盤だけではない。たとえば、空港の耐震設計に定められた震度や安全基準が適用されていないという重大な誤りが指摘されている。21年の不承認理由を司法が問わないなら、沖縄県はこの耐震設計の欠陥を理由に設計変更を不承認にしなければならない。構造物の安全にかかわる事項であり、見過ごしてはならない。工法変更により、環境影響評価からやり直すべき事項がいくつも指摘されている。

 そもそも、当初の承認自体を撤回することが必要だ。完成時期やオスプレイ運用など当初の条件からは大きく異なった使い方が明らかになっているからだ。だまして得た承認は無効。撤回できる。

  *  *  *

 米軍自体、沖縄防衛局の軟弱地盤対策に納得していない。米連邦議会の中にも辺野古基地建設への批判的関心がたかまっている。OEJP(沖縄環境正義プロジェクト)書簡キャンペーンやDSA(アメリカ民主主義的社会主義者)の働きかけで辺野古反対の声が米国内にも広がりつつある。

 辺野古建設問題には工事の安全性だけでなく、環境破壊、自治権否定など重要な課題が凝縮している。玉城知事を支え、あらゆる方策を尽くして、違法な辺野古埋め立てを断念させよう。

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