2024年08月02日 1832号

【新作ミュージカル/私はここだ! Hope is in ourselves/ユースが引っ張った川崎プレ公演/「月桃の花」歌舞団・青島みのり】

 7月7日に新作オリジナルミュージカル『私はここだ!Hope is in ourselves』のプレ公演を行いました。観劇は無料で関東歌舞団では初めて最初から最後まで通す全幕での公演でした。暑い中、約80名の方に来ていただき、成功しました。

 10代の歌舞団ユースメンバーたちが、通っている学校や前に通っていた学校の友達などに声をかけ15名以上を組織し、参加につなげました。街頭宣伝でもユースメンバー自ら「宣伝もっとやりましょう。少ないです」「公園より夕方の駅の方が人がいて受け取ってくれます」とベテランメンバーに発信し、平日、学校が終わってからも宣伝しました。チラシ配りでは「私が主人公をやっています。観に来てください」と堂々とした声かけが目立ちました。いままでよりもユースメンバーがさらに前へと出て、取り組めた公演でした。

心に刺さった劇中の言葉

 私自身が今回、公演を広げようと思った大きな要因は、関西歌舞団の大阪公演(5/18)を現地で観たことにあります。公演を控え、練習、衣装・道具の制作、宣伝などを並行して行わなくてはならず、いざ「この劇で何を伝えるのか」「なぜ人に観てほしいと思っているのか」をメンバーが明確にして宣伝することは最初は難しいものでした。

 けれど、私は大阪公演を観て、10代20代のメンバーが劇の中で叫んでいる言葉が心に刺さりました。辛さを抱えて今を生きている若者たちの言葉が私に刺さったのです。「いい劇だ。これはいろんな人に観てほしい」。その時、心からそう思えました。

 それまでは劇を形にすることで精一杯。中身を良いものにしようという気はあるものの、本当にメッセージが届くのかどうか、心のどこかで不安がありました。いまでは、この劇を必要としている人がいると確信を持つことができています。

 大阪に一緒に観に行ったユースメンバーたちも強弱はあれ、私と同じようなことを感じたと思います。友達に観てほしい、街を行く人に観てほしい、若い人に観てほしいと思えた人から、劇へ誘う呼びかけが広がっていきました。

 主役級メンバーは、平日夜や本番前日の夜まで個別練習を組み、役をどう自分と重ねて表現するのか最後まで考え本番に臨みました。

 本番は場面のつなぎつなぎでぎこちなさはあったものの若者キャストを中心に自分らしい表現に注力し、なり切るのでなく、その人にしかできない表現で役をやり切ることができました。

言えないことを言える

 終わった後のユース感想交流会にも主人公さくら役Mさんの友人たち(高校生)が参加し交流できました。「世界でいま起きている戦争や学校から現地に行って知ったサイパンの歴史を(「集団自決」に言及する場面で)思い出し重なった」「沖縄の戦争のことを知れて良かった」と感想が寄せられました。また、プレ公演への過程で、住民役のKさんの知人が裏方で尽力してくれたり、Mさんの友人が少年兵役で新たに出演したりと新しい人が加わっていく動きもありました。

 特に10代のユースメンバーが歌舞団を広げたいと思えるのは、道具制作のために合宿をしたり、お菓子作りをして地域の祭りで販売したり、練習の休憩時間には悩みを語り合ったり、稽古にとどまらない関わりをしてきたからこそ、学校や職場では言えないことを言える歌舞団だからこそだ、と私は感じています。

 10月14日(月・休)ラゾーナ川崎プラザソルでの本公演に向けてパワーアップしていきます。新しい歌舞団をぜひ目に焼き付けに来てください!


《あらすじ》 保育士をめざしアルバイトで稼ぐ専門学校生さくらと、奴隷のような労働を強いられる兄、駿。訪問看護師のゆり。それぞれに生きづらさを抱えた若者たちが、沖縄戦にタイムスリップし、戦場での死を目前に「生きる大切さ」を見つけ、希望を手にする。



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