2024年08月09日 1833号

【6面 ZENKO反原発分科会/6・17行動から共同行動発展へ/最高裁と控訴審を闘い抜く】

 福島原発事故に”国の責任はない”とした最高裁判決からまる2年。6月17日には、さまざまな市民・団体が共同して千人を超える最高裁包囲のヒューマンチェーンに取り組んだ。「久しぶりに連帯感・解放感を得てやる気がわいてきた」の感想が共通だ。2024ZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会)反原発分科会は共同行動継続へ奮闘することを確認した。

 損害賠償かながわ訴訟の原告団長で共同行動実行委員会事務局長の村田弘さんは「6・17行動は人権を核に、原発被害回復から再稼働差し止め、公害、反戦平和まで幅広い共闘体制を築いた。歴史的な成功だ」と高く評価する。「政界・財界・司法の癒着、司法の劣化が進む中、最高裁に上がっている裁判できっちり審理させ、控訴審段階を闘う裁判で“国に責任あり”の判決を勝ち取ることが当面の共通課題」と述べた。今後、「実行委員会運動で生まれた連帯を基礎に『市民共闘会議』のような全国組織へ発展させたい。反原発だけでなく、公害や沖縄課題も含め幅広い法廷内外の共同行動を展開していこう」と訴えた。

 討議では、「高裁判決で勝って最高裁に行きたい。ハガキ行動に協力を」「健康診断の無償化など政策は、国に責任を取らせることでできる。最高裁闘争は重要」(京都訴訟)「千葉訴訟と愛知岐阜訴訟は最高裁第1小法廷となった。共同して最高裁行動にがんばる」(千葉訴訟)など、具体的な意見が出された。

再エネで原発ゼロは可能

 ミニ講演では、放射能被ばくの健康被害について311子ども甲状腺がん裁判などの弁護団長を務める井戸謙一弁護士が話した。ドイツとの交流を続ける折原利男さんは「原発ゼロは可能か―ドイツに学ぶ」と題して再生可能エネルギーの展望を話した。

 井戸さんは福島原発事故による放射性物質放出量の過小評価、年間100_シーベルトのウソ、年間20_シーベルト安全論を批判し「国も福島県も、小児甲状腺がん多発の事実に、因果関係を否定するがすでに論破されている」と報告。「せめぎあいの中で確立された年間1_シーベルト基準を日本においても定着させねばならない」と述べた。核保有国の戦略である低線量被ばく・内部被ばくの無視を指摘し「核兵器は残虐な兵器ではない、と世論誘導する。フクシマを核事故の際の住民被ばく対策のスタンダードにしようとしている」と、裁判の大きな意義を訴えた。

 折原さんは、全原発を止めたドイツを事例に「再生可能エネルギー100%を低コストで実現することがもはや科学者らの研究結果の主流だ」と訴えた。ドイツは地域住民の原発設置反対運動が州政府を動かしたが、緑の党誕生のように運動を背景に議会に進出していったことが大きいと、経過を説明。「チェルノブイリ事故をきっかけに、脱原発の法制化を進め、原発に依拠しない社会への転換を固いものとした。日本でも2013年から15年まで原発ゼロでも電気は足りていた」と、政治の姿勢次第で原発ゼロは可能だと話す。「営農型太陽光発電のように環境を破壊せず、農業と発電を活かせる。太陽光パネルの廃棄問題も今では96%リサイクルで処理できるようになった。政府や企業の立場からだけでは脱原発を倫理的に問う議論は出てこない。意思決定プロセスへの市民参加の実現、民主主義のあり方と結びついている」と述べた。

連携強め運動広げる

 分科会は最後に、現在最高裁に上がっている損害賠償訴訟や東電刑事裁判、子ども脱被ばく裁判、住宅裁判などの相互協力連帯、京都訴訟や津島訴訟、東電株主訴訟など、控訴審段階での勝利判決を勝ち取る支援強化が呼びかけられた。

 また、年内にももくろまれている女川(おながわ)・島根・東海第二・柏崎刈羽再稼働の阻止、子ども甲状腺がん裁判・汚染水差し止め訴訟など健康被害の責任を明確に迫る闘いの支援も確認された。

 避難者の怒りを綴った映画『決断』の上映運動など、視覚に訴えて運動を広げていく。原発を無くし再生可能エネルギーをベースにした本格的な政策転換に向け、各地で再エネの学習を進めていく方針も共有された。





MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS