2024年08月16日 1834号
【イラク労働者共産党サミール・アディルさんに聞く/グローバル帝国主義が世界を軍事化/労働者階級の闘いを一つに】
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イラク労働者共産党(WCPI)書記長サミール・アディルさんはZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会、7/27〜7/28)に参加し、3つの補強提案をした。▽「世界の軍事化」との闘い▽パレスチナ連帯のための労働戦線の結成支援▽イラクでのCFC(自由と変革のための会議)設立支援だ。その提案の持つ意味について、改めて聞いた(インタビューは7月28日。ZENKOでの発言も含め、編集部で再構成した)。
「世界の軍事化」は「グローバル帝国主義」という時代認識と関連していると思うが、どんな意図があるのか
ZENKOの交流会で、「なぜ米国政府はイスラエルを支援するのか」という質問があった。
中東と言えば石油利権と結びつけて説明されるが、今の局面は、米国の中東戦略の拠点がイスラエルであり、イスラエルが弱体化すれば米国の中東支配も弱まるととらえる必要がある。
ウクライナ戦争と同様に、パレスチナ問題においても、帝国主義間の争いが背景にある。グローバル資本が国境を超えて投資をし、権益争いを行っている時代だ。グローバル帝国主義が世界中で武力を行使し、軍事化を進めているとみなければならない。
米国の中東戦略を振り返ってみると、オバマ政権1期目は「世界戦略」を語り、2期目は「中国の脅威」に言及している。トランプ政権もそれを受け継いでいる。イラクやシリアから米軍を一旦引き揚げたのも「インド太平洋」へ重点を移すためだった。中東ではイスラエルとアラブ4か国間の国交正常化「アブラハム合意」(注)を促し、サウジアラビアとイスラエル間の関係改善も進展した。これで、対中国にシフトすることも可能となった。
だが、昨年の10月7日以降、状況は大きく変化した。米国が中東に戻ってこざるを得なくなった。イスラエルに対する政治的、経済的支援がより必要となった。
ハマスなどのイスラム政治勢力を支援しているのはイランであり、その背後にはロシアがいる。イスラエルが弱体化すれば、イラン、ロシアの影響力が増す関係にある。例えば、サウジアラビアは脱石油政策として、原子力発電プラントを導入しようとしている。イスラエル、米国が協力を拒否すればイランが提供する。当然イランの影響力が高まる。米国にとって中東はもはや石油資源の輸入先という利害ではなく、商品の輸出先であり、米資本の投資先だということだ。
パレスチナ連帯にむけた労働戦線の形成にはどんな意味があるのか
パレスチナ連帯の現状は、イスラム主義や民族主義の傾向が強い。パレスチナの問題は、宗教の問題でもなければ、民族の問題でもない。今答えたように、グローバル帝国主義間の闘いなのだ。だからこそ、労働者階級としての支援連帯の闘いが重要だ。
労働者がどんな力を発揮するのか。米国カリフォルニア州で、イタリアで、港湾労働者がイスラエルへの武器輸出を止めた。こうした力を結集する必要がある。
イラクの石油労働者のリーダーやパレスチナの友人に声をかけ6月に協議の場を持った。ここでの基本的な合意をもとに、労働組合リーダーや活動家に新たな労働センター結成を呼びかけた。このプロジェクトには多くの賛同が得られた。
アラブ諸国の労働組合はほとんどが御用組合だが、このプロジェクトには、政府とは距離を置く独立した労働組合が結集する。最初は中東地域から始めるが、北アフリカのアルジェリアやモロッコ、チュニジアにも広げたい。イスラエルの労働者にも呼びかける。
将来的には、ウクライナやロシアの労働者を迎え入れたいし、台湾問題や朝鮮半島の問題など、グローバル資本主義と闘う労働戦線へと発展させたい。
イラクで結成するCFCの必要性と現状は
イラク戦争後20年経つが、人びとの暮らしは、人間らしい生活とはほど遠い状況にある。炎天下、摂氏62度になることもあるが、電気が供給されず、クーラーも使えない。1200万人以上の失業者であふれている。親イラン勢力と親米勢力の抗争が続き安全もないため、資本さえ投資をさけ経済は行き詰っている。
こうした状況に、政府に対する大規模な抗議行動が各地で、何度となく起こった。だが勝利に至らなかった。その原因は統一的な組織がなく、展望を示せなかったからだ。
そこで、2018年以降、バスラやバグダッド、スレイマニアなどの主要都市を中心に学生、女性、若者や労働者に呼びかけ「円卓会議」を組織してきた。この積み重ねを経て5月17日、「福祉、自由、安全」をスローガンに掲げ、イラクの革命的変革を目指すCFCを結成することになった。クルディスタンを含むイラク全域にわたる、政教分離の民主的大衆組織となる。
9月には、基本方針の採択や役員選出を行う第1回目の会議を開くことにしている。イスラム政治勢力はイランからの支援を受けている。民族主義党派はアラブ諸国の支援があり、IMF(国際通貨基金)や世界銀行の新自由主義を受け入れる勢力は米国の支援がある。これらから独立したCFCは、ZENKOのようなグローバル帝国主義と闘う民主的、進歩的な団体からの支援を必要としている。
ZENKO参加者、週刊MDS読者にメッセージを
昨年のZENKOで、パレスチナ支援を方針に入れるよう提案した。10月7日の戦闘前だったが、ZENKOの活動にとって必要なテーマだと思った。今年のZENKOで、パレスチナ連帯行動の報告を聞いた。今や、最前線の闘いになっていると思う。
ウクライナ戦争をめぐり、左翼勢力が混乱する中で、「即時停戦」を打ち出せたのは、社会主義者としてのMDS(民主主義的社会主義運動)が国際主義を堅持しているからだ。グローバル帝国主義の時代にあって、労働者階級の視点から国際連帯の闘いを拡げ、強化する必要がある。ZENKO運動はその重要な役割をになっている。今回、私の提案が取り入れられ、感謝している。ともに闘おう。
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〈アブラハム合意とは〉
2020年、米政府の働きかけでアラブ4か国(アラブ首長国連邦、バーレーン、モロッコ、スーダン)が、相次いでイスラエルとの国交正常化に合意した。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教共通の祖とされる「アブラハム」の名をとって、「アブラハム合意」と呼び、トランプ政権の外交成果としているが、アラブ諸国はイスラエル経済圏にとりこまれ、パレスチナ解放は置き去りにされた。
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