2024年08月16日 1834号
【福井・敦賀原発2号機 史上初の「不合格」 原電破綻させ原発政策転換を】
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2013年から11年に渡って続いてきた日本原子力発電(原電)敦賀原発2号機(福井県敦賀市)の審査について、7月26日に行われた原子力規制庁の審査会合は新規制基準に「不適合」とする最終案を決定した。日本の原子力規制組織が原発の適合審査で「不合格」とした例は福島原発事故以前にもなく、史上初だ。
「資料改ざん」の末に
経緯を振り返る。福島原発事故を受け2013年に定められた原発の新規制基準では、原子炉建屋などの最重要施設は活断層の上に建ててはならないとされた。既存の原発にも適用され、重要施設の直下を走る断層が活断層と認められれば原発は運転できなくなる。
敦賀2号機は2012年4月、原子力規制委員会が直下を走る断層を現地調査。
阪神・淡路大震災(1995年)と同規模の地震を引き起こすとされる「浦底断層」と一体の「K断層」が、活動性の目安となる「13万〜12万年前より最近」に活動した可能性が否定できないとする報告書を作成した。その後、2014年に作成された報告書でもこの評価は変わらなかった。
納得しない原電は、2015年、規制委に審査申請を「強行」。周辺の地層が古い火山灰の堆積であるとする反論資料を提出し抵抗を続けた。この審査の過程で原電が80か所も資料の改ざんを行っていたことが判明。規制委の審査は2020年から約2年間中断した。2022年10月の審査再開後も150か所を超えるデータの不備が発覚するなど審査は進まなかった。
2023年に入ると、規制委が審査の打ち切りを示唆。原電は、浦底断層とK断層は無関係だとする資料を提出してなお抵抗を続けたが、審査結果を覆すには至らなかった。
26日の審査会合で原電は、K断層が活断層でないと証明するため「独自の追加調査を実施したい」としたが「この段階で異議を唱えるなら、なぜこちらが資料要求した際にきちんと対応しないのか」(石渡明・規制委員)と一蹴された。
原電「破たん」危機
審査会合終了後、村松衛・原電社長は、敦賀2号機について「廃炉の意思はない」と表明した。
だが、原電が所有する4つの原子炉のうち、敦賀原発1号機と東海原発(茨城県)が廃炉中、東海第2原発も再稼働への同意権を持つ地元6自治体から同意を得られる見通しが立たない。この状態で敦賀2号機が「不合格」に追い込まれたことで、以前から囁かれていた原電の「経営破たん」が現実味を帯びてきた。
そもそも、原発専門会社であり、福島原発事故後は1ワットの発電すらしていない原電がなぜ13年以上も存続しているのか。東京、関西、中部、東北、北陸の大手電力5社が「基本料金」を払って支えているからだ。福島原発事故後の13年間で5社が原電に支払った額は1兆4千億円に上る(8/2「日経」)。すべて利用者が払った電力料金である。これだけの無駄金を垂れ流す原発を「最も安い電源」などと宣伝する原発推進派はウソつき集団だ。
所有全原発から再稼働の可能性が消えつつある原電を、市民の闘いで解体に追い込まなければならない。原電の対応に不信感を抱き、再稼働に同意していない東海第2原発地元6自治体を支え、地元の闘いと連帯することが必要だ。
規制委にも圧力を
今回、規制委は敦賀2号機を新規制基準「不適合」とした。だが、資料改ざんなど原電の失態の部分が大きく、規制委が原発の安全を守るため急に「目を覚ました」わけではない。原電以外の大手電力各社の審査では再稼働ありきの「大甘審査」を続けている。
今年1月の能登地震以降、巨大地震を引き起こす断層の存在が改めて注目されている。規制委に対して、再稼働ありきではなく、活断層の存在を前提にきちんした審査を行うよう強く求めなければならない。 |
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