2024年08月16日 1834号

【未来への責任(404)/強制動員真相究明ネット20年】

 民主化以降の韓国では、四・三事件や光州(クヮンジュ)事件などの軍事政権下の弾圧事件に留まらず、国家によってなされた「過去」の「人権侵害」を清算するための法律が数多くつくられた。その中に、日本の植民地支配下の「強制動員被害の真相を糾明して歴史の真実を明らかにする」ための「日帝強制占領下強制動員被害真相究明等に関する特別法」が2004年に制定された。

 この動きに応えるため、日本の各地で朝鮮人強制動員問題に取り組む市民団体の全国的なネットワークとして2005年に「強制動員真相究明ネットワーク」が結成された。20年目の今年、これまでの活動の総括と今後の課題について議論する第16回強制動員真相究明全国研究集会が7月27日、東京で開催された。

 この20年間に韓国では、「真相究明法」によって確認された20万人に及ぶ強制動員被害者支援のための法律がつくられ政府自ら被害者救済への道を歩んで現在に至っている。

 一方日本では、明治産業革命遺産の世界文化遺産登録に際して強制労働被害者の展示を公約しながら反故(ほご)にしたり、東京都知事が関東大震災時の朝鮮人虐殺への追悼を拒否し、群馬県知事に至っては朝鮮人追悼碑を行政代執行で撤去させる事態まで生じた。第2次安倍政権以降政府が「歴史否定」を「主導」する事態となっている。

 今回、集会のテーマのひとつに「強制労働の歴史否定を問う」が取り上げられた。ネットワーク会員の竹内康人さんは、「朝鮮人強制労働・歴史否定論の特徴」と題して、明治産業革命遺産の登録を推進した「産業遺産国民会議」、韓国大法院が認めた被害者の慰謝料請求権を全面否定する日本政府、誤った歴史認識を「拡散」する歴史認識問題研究会などの動きを示し、「植民地主義」が克服できていない危機的な日本の状況を変えていかなければならないと訴えた。くしくもこの日、佐渡鉱山の世界文化遺産登録が決定したニュースが伝えられた。

 この決定を受けて韓国の民族問題研究所は、即座に「佐渡鉱山の『全体の歴史』から欠落している韓国人の『強制動員』、日本政府の強制動員否定とそれを容認した韓国政府を糾弾する」という声明を発表した。

 声明は「強制性」を否定するために日本政府が用いる「朝鮮半島出身労働者」という表現をそのまま受け入れた韓国政府の姿勢を批判し、「佐渡鉱山が歴史否定の現場ではなく、強制動員被害者の歴史的真実を明らかにし、記憶する真の世界遺産の現場」にしなければならないと結んだ。歴史否定との闘いがこれからのネットワークの重要な課題であることを改めて確認する集会となった。

(強制動員真相究明ネットワーク 中田光信)

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