2024年08月30日 1835号

【福島原発事故を忘れるな/ドキュメンタリー映画『決断』連続上映/各地で自主上映会を】

 ドキュメンタリー映画『決断―運命を変えた3・11母子避難』(監督安孫子亘2024年製作/90分)の自主上映会が各地で取り組まれている。原発賠償訴訟団が企画、上映会には原告が参加し、トークもある。

 2011年3月、福島第一原発が爆発。高濃度の放射性物質が広範囲に拡散した。政府は避難を指示する区域を定めた。逆に「区域外」は避難の必要性を認めなかった。放射線被害を避けようとする同じ避難者が分断された。この映画は、「区域外」避難者がどんな思いで避難を決断したか、その苦悩と現状を記録したものだ。

 福島県南相馬市から京都市へ避難した福島敦子さん。二人の娘と一緒だ。次々と体に異変が現れた。腸に穴が開いた。子宮全摘、脳腫瘍開頭手術もした。放射線の影響を受けやすい部位だ。原発賠償訴訟京都原告団の共同代表となった福島さん。「この子たちに原発の尻拭いをさせたくない。これを一生抱えていくには長すぎる」

 映画に登場する10人の避難者とその家族は北海道、沖縄、大阪など見ず知らずの土地に居を構えた。母子避難のまま別居、離婚をたどる家族もある。共通するのは「子どもたちを被曝から守る」決断だ。「自らの決断が正しかった。そう認めてほしい」と願っている。

 原発事故から13年経過し、被曝の事実が忘れられようとしている。国は責任を認めず、避難者への救済を次々に打ち切っている。「まだ自立できないのか」と心無い非難の声もある。数多くの避難者が取材に応じたが、この映画で名前と顔を出せたのは10家族だった。

 原発事故は原発があるところならどこでも起きうる。「他人事ではなく、我が事として原発事故や被曝、避難の問題を考えてほしい」と京都原告団を支援する会奥森祥陽事務局長は呼びかけている。

 自主上映会は、観た人が自分の周りの人に広げたいとの思いを強くし、次へ、次へとつながっている。これが京都原告団への支援を広げることになる。京都地裁で国の責任と「区域外」避難の権利を認める画期的な判決を手にしている京都訴訟団は、12月18日に高裁判決を迎える。支援する会は「それまでに大きな世論をつくりたい。上映会、裁判官への1万枚要請はがきに協力を」と訴えている。

 映画は、「福島からの区域外避難者」の声を集めているが、京都訴訟の原告(171人)には福島以外からの避難者も加わっている。茨城県から避難した原告の一人は、「判決後も上映会を続けたい。この映画をきっかけに、自分の選択を話せる機会にできる」と語っている。

 上映会の情報は「原発賠償訴訟・京都原告団を支援する会
MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS