2024年09月06日 1836号
【岸田政権3年間の悪行/沖縄新基地 大浦湾で杭打ち強行/自治破壊 司法崩壊招く】
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沖縄にとって岸田政権の3年間は、最悪の事態が一層進行する日々だった。辺野古新基地建設をめぐり国は法を守らず、条例・行政指導・協議はまるで無視、沖縄県など存在しないかのような振る舞いだった。沖縄での新基地建設の強行とともに、全国で軍事基地強靭化が進められた。岸田政権の大軍拡路線を次期政権に継続させてはならない。反基地、軍縮の闘いで政策転換への圧力を強めよう。
事前協議せず着工
辺野古新基地の建設工事は大浦湾の埋め立てに踏み込んだ。沖縄防衛局は8月20日、沖縄県との事前協議を行わないまま、杭打ちを始めたのだ。
埋め立て地の北端から東側を固めるA護岸。鋼管杭を連続させた壁を内側と外側に2列造り、その間を土砂で埋め護岸とする。延長約540m。水深は10m程度ながら、楚久(すく)断層に沿った位置となる。
護岸用の鋼管杭は太さ1・0〜1・4b。杭の先端部から高圧水を噴射し地盤を緩め、振動により所定の深さまで押し込む工法に変更された。他の工法に比べ、施工が速く工期短縮できる。だが、最も海洋を汚濁する工法でもある。
A護岸はC護岸に続く。このC護岸もまた楚久断層に沿っており、マヨネーズ状と言われる海底90bにいたる軟弱地盤は、この楚久断層と辺野古断層が重なる地点に存在する。
海洋汚濁への対策など工事を始める前に確認すべき事項は多い。県との事前協議は、11年前の埋め立て工事承認(仲井眞弘多(ひろかず)知事)の条件なのである。しかし、沖縄防衛局は6月に事前協議を打ち切り、7月から「試験的な施工」と称して杭打ち準備を始めていた。承認条件さえ守らない政府に玉城デニー知事は「事前協議が調っていないにもかかわらず、一方的に協議にかかる工事に着手したことは誠に遺憾だ」と抗議し、工事中止を文書で指導する考えを表明した(8/20)。
死亡事故にも対策なし
政府の身勝手さはこれだけではない。沖縄防衛局は8月22日、埋め立て用土砂の海上輸送積み込み場所である名護市安和(あわ)桟橋の使用を再開した。
この桟橋は琉球セメントが自社セメントの搬出を目的に県から許可を得て設置した施設であるにもかかわらず、防衛局が埋め立て土砂の輸送目的に転用しているところで、抗議行動の拠点の一つだ。6月28日、抗議する市民と警備員が国道(県管理)に出ようとするダンプカーにひかれ、警備員が死亡し市民が重傷を負う事故が発生。県は防衛局に対し、事故原因の究明、再発防止策を求め、使用停止を要請していた。
防衛局は県への報告もせず、市民を排除するネットを張る対策を考えた。事故現場は国道の歩道である。桟橋への出入り車両乗入れのために道路のようになっているが、歩行者優先が当たり前のところだ。この歩道を往来する市民を工事現場の警備員が妨害しようというのだ。紛れもない違法行為である。
政府の節操のなさは工事発注にも及んでいる。20日に杭打ちを始めたA護岸工事は大成・五洋・國場の企業体が93億4千万円で昨年12月に落札しているが、今年3月、未着工の段階で5億円強増額変更した。C護岸も同じメンバーの企業体で、当初261億4700万円の落札額が117億2980万円増額され、380億円近くなっている。同企業体はもう1件落札しており、それも当初の1・6倍、約84億円に変更された。
公共事業では変更による増額は1・3倍を目安にしている。それを超える増額の場合は別途契約とし、入札制度の節操を保っている。だが、辺野古ではお構いなしだ。着工もしていないのに増額変更がまかり通る。C護岸にいたっては軟弱地盤対策が不確実で、工法さえ決まっていない「とりあえず発注」なのだ。今後、さらなる増額が控えている。
無法支える忖度判決
なぜ、こんな無茶ができるのか。岸田政権下で進行した地方自治破壊、司法崩壊にその原因があることは明らかだ。
玉城デニー知事が沖縄防衛局の設計変更を不承認にしたのは2021年11月。岸田政権発足後ひと月のことだった。国土交通相は行政不服審査法を悪用した沖縄防衛局の不服申し立てを受け、翌年4月、沖縄県に「是正指示」を行い承認を迫った。県が「是正指導」は違法と訴えた裁判は23年9月、最高裁が「適法」としたが、それは「是正指導」という行為についてのみだ。
国は翌10月、地方自治法による代執行訴訟を提起。福岡高裁は県に「承認」の執行命令を出した。県は最高裁に判断をもとめ、承認しなかったため、国が県の権限を奪い、12月「承認」を代執行したのだった。翌年3月、県の上告は棄却。判決は確定した。
以上が岸田政権が沖縄県の不承認判断をねじ伏せた3年間の経過だ。行政不服審査法と地方自治法を組み合わせれば、政府の思い通りにできるという悪例を見せつけたのである。
この法さえも捻じ曲げる政府の無茶を司法は咎(とが)めるどころか、擁護した。県と国の見解がまったく異なったものであったにもかかわらず、司法は一度も県の不承認理由の合理性について判断を示さず、国の言い分をそのまま認めたのだ。
国と地方の対等な関係を定めた地方自治法を最高裁自身が守らなかった。
全国自治体にも波及
岸田政権が辺野古で見せた強硬姿勢は、全国の自治体へと波及している。全国にある既存の自衛隊基地を強靭化するとともに、自治体管理の空港・港湾施設を軍事転用できるよう改築する。基地周辺の市民情報を取得し、監視する。米兵の暴行事件すら知らせない。市民の命と生活を守る地方自治体の権限・役割は蔑(ないがし)ろにされ、政府の統制が強まっていく。
地方自治法が今年6月改悪され、政府の「指示権」が明記された。24年前の改定(国・地方は対等)の流れを打ち消すものだ。これは、沖縄県をねじ伏せた筋書きがあまりに無理筋だったことを政府自身が分かっていたからでもある。
地方自治や民主主義は戦争国家作りには邪魔だと政府は思っているのだ。
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自民党総裁選で岸田から総裁の座を引き継ぐ者が誰になろうとも、現在の自公政権の下ではこの軍拡路線を継承することは間違いない。そうさせないためには、戦争政策の一つ一つに反対し、平和外交強化、軍縮実現の対案を突き付けていく以外にない。
辺野古新基地建設は阻止できる。改めて埋め立て承認を撤回することは可能だ。「代執行」取り消しを求める住民訴訟も7月、第1回口頭弁論が始まった。
東アジアの軍事緊張を高めるのではなく、近隣諸国との平和外交を尽くせ。他国を攻撃するミサイル配備をやめろ。ガザ、ウクライナでの戦争停止に尽力せよ。今必要な声だ。
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