2024年09月06日 1836号

【未来への責任(405)長生炭鉱 坑口を開けよう】

 7月15日山口県にある多くの朝鮮人労働者らの犠牲をもたらした長生(ちょうせい)炭鉱水没事故(水非常、1942年)現地の追悼の広場で「みんなの力で、坑口を開けようスタート集会」が行われた。韓国からは元副総理や弁護士、支援者の訪問団35名が日帰りで、韓国高校生も含めて60名が参加。全体では170名の参加になった。

 スタート集会の後、床波海岸の海から50mの坑口近辺の清掃活動には100名が参加した。事故の後、危険だと坑口は閉められた。その場所は窪地になり戦中戦後、粗大ごみが投げ入れられた。生き埋めになった人たちの坑口にごみを捨てるのも人間である。その場所からごみを取り除き、遺骨を収集しようと努力するのも人間である。

 清掃活動には近所の方も何人も来られていた。そのお一人は「結婚して宇部にきた。おばあちゃん(義母)から、事故の時、朝鮮の人がアイゴーアイゴーと泣いていたと何度も聞かされた。だから清掃するのを知って行かなくてはと思って来た」とのことだ。

 坑道入り口付近は我々「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会」の土地ではない。戦後、ポツダム政令で町会や部落会・隣組などの所有財産は新しい市町に没収された。それは政令廃止後も続いてきた。この土地の登記は地元任意団体となっているが、実質は宇部市の所有だ。

 宇部市は、坑口を掘る使用許可を求める我々の交渉に「宇部市は登記していないので関係ない。関係ないのでどう使おうと何も言わない」。さらに「使用する目的がなかったので登記しなかった」と主張しだした。この土地は所有権を主張する者のいない土地になっている。市の財産を登記していないこと自体が問題であり、百歩譲って使用目的がないという主張はありえない。遺骨を遺族に返し、坑口を平和と人権のための遺構として残すという使用目的がある。

 7月16日、刻む会はこの土地問題についての記者会見の後宇部市に工事通告をした。8月末までに宇部市に異議がなければ工事に入ると通告した。異議がなければ10月26日に坑口を開ける。

 スタート集会では、工事に入る工務店にも発言いただいた。行政と争っているこの工事に携わることにメリットなどない。しかし、社長は「人としてこの工事をやらねばと思っている」と力強く発言した。会場が大きな連帯と感動の拍手に包まれたのは言うまでもない。

 今クラウドファンディングを始めている。坑口を掘るのに650万円。調査に150万円。8月22日現在約515万円が集まった。皆さん一緒に立ち上がってください。

(長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会 上田慶司)

MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS