2024年09月06日 1836号

【人権侵害あと押しする経営法曹/「差別されない権利」の実現を/10・22東京総行動 10・27団結まつりへ/首都圏なかまユニオン委員長 伴幸生】

 首都圏なかまユニオンは8月4日、定期総会を開催し、団体交渉・労働委員会闘争などを通じた「より早くより高い」争議解決や地域支部での取り組みを中心に、職場・職域での組織化を進めていく方針を議論しました。

深刻なハラスメント被害

 組合に加入して権利を回復し、労働条件の改善を進めるきっかけとなる労働相談の場では、ハラスメント行為を受けたというケースが大半を占めるようになっています。ハラスメントによって深刻な精神疾患を発症しているケースも多く、生活・医療相談につなぎながら取り組みを進めていくことになります。

 「障がい者」雇用が法的に保障され、「合理的な配慮」がこの4月から義務付けられましたが、明らかに「心理的な虐待」に当たるケースもあり、雇用関係に関して何らかの「解決」を得られても働くことも困難な状況に至ってしまう場合があります。日本政府に対しILO(国際労働機関)ハラスメント禁止条約の即時批准と「包括的差別禁止法」の制定を求める取り組みを様々な共同行動を通じて実現していくことを大事にしたいと考えています。

実効性ある労働基本権を

 この間取り組んだ団体交渉の特徴は、団交に使用者側の弁護士が出てきて拒否姿勢を貫く事例が増えてきている点です。使用者が弁護士に労働組合の要求を拒否する依頼をすれば、弁護士は依頼者のために動きます。また、ユニオン対策を業務として売り込む弁護士・法律事務所さえ存在します。これは集団的労使自治を基本とする労働法体系を破壊する脱法行為であり、それを商売とすることなど許されません。労働法体系を壊す弁護士業務とそのような弁護士を利用する使用者―それらを規制する制度を構築する運動が不可欠になっています。

 経営法曹(弁護士)が労使の団交の主導権を握る最近の動向に対し、労働組合法上の労使自治と団体交渉制度を実質的に破壊するものととらえ、労働委員会をはじめ厚生労働省・審議会・弁護士会への働きかけを他の労働組合や学者にも呼びかけ共同で取り組んでいこうと考えています。

人間らしく生きる権利

 厚労省は1月から開始した労働基準関係法制研究会において、労基法改悪を推し進めようとしています。労働条件の最低基準を定めた労基法の根幹となる労働時間規制を、「多様な働き方」に合わせて個別の契約によって適用外にしてもいいとする議論が公然と行われています。「スキマバイト」「業務委託」など社会保険が適用されない「不安定雇用」の実態を改善するのではなく、低収入を「長時間労働」で補わせようとするものです。雇用主に課せられた「労働時間管理」「労働環境」保全の責任を外し、「多様な働き方」を選択した労働者の自己責任にしようとしています。

 8時間働けば「健康で文化的な最低限度の生活を営む」ことができるようにして「過労死」まで発生している日本の労働環境を根本から改善するのではなく、雇用の場から「労働時間規制」さえなくそうとする研究会の動きを止め、「人間らしい働き方」を実現する労働法制の強化こそ必要です。

 ともに運動を進めている「雇用共同アクション」では、この研究会に対し「意見書」を提出し、労働現場の実態に即して労働法制の抜本的な改正を行うよう要求を打ち出しました。労働組合差別である不当労働行為を抑制する罰則強化などと合わせて、共同行動を広げながら、「差別されない権利」をともに実現する秋の闘いを進めていきます。10・22東京総行動と10・27団結まつりがその一歩となります。



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