2024年09月20日 1838号

【1838号主張/戦争のための8・5兆円/沖縄・全国の軍事化とめよう】

史上最大の軍事費要求

 防衛省は8月30日、2025年度予算の概算要求を決定した。政府は、23〜27年度の5年間の軍事費をそれまでの1・6倍となる43兆円に増やす方針だ。3年目の25年度は前年度比10・5%増の8兆5389億円に達した。史上最大だ。

 総額だけではない。敵基地攻撃能力の関連予算に9700億円を計上。多数の人工衛星で目標を探知・追尾する「衛星コンステレーション」に3232億円をつぎ込み、30億円をかけ、目標めがけて飛ぶ自爆型ドローンも導入する。

 岸田首相が政権を投げ出し自民党総裁選の空騒ぎが繰り広げられる陰で、自公政権が進めてきた先制攻撃能力強化が加速していることを見逃してはならない。

際立つ琉球弧の要塞化

 防衛省の沖縄関係経費として2091億円が計上された。那覇や石垣島に電子戦部隊を配備し、武力攻撃を受けた際に住民が避難するシェルターを設置する。沖縄を戦場とすることを前提としているのだ。島嶼(とうしょ)地域が戦場となれば、住民に逃げ場はない。多数の住民が犠牲となった沖縄戦の教訓を忘れてはならない。

 8月20日、沖縄防衛局は、辺野古新基地建設の大浦湾側護岸造成工事を開始した。8月22日には、死傷事故を出した安和(あわ)桟橋での土砂運搬も再開。多数の杭を打ち込む工事で濁り水が発生し、サンゴなど貴重な環境に深刻な影響が出始めている。

 しかし、木原防衛相は「協議は十分に行われた」と一方的に沖縄県との協議を打ち切った。9月2日には、沖縄県の不承認処分を取り消した国土交通相の裁決を違法として県が取り消しを求めた抗告訴訟で、福岡高裁那覇支部は「訴訟を起こす資格を持たない」として訴えを退けた。沖縄県の存在を無視する国家権力、司法による暴力だ。

命と暮らしを守れ

 この軍事費43兆円は、円安による武器価格高騰や後年度負担(ローン払い)を入れれば実額がさらに膨れあがることはことが必至だ。政府はそれを「軍拡増税」で賄おうとしている。岸田政権は批判を恐れ先送りを続けるが、増税・負担増は、社会保障の切り捨てと相まって物価高と低賃金にあえぐ市民生活をさらに直撃する。

 9月5日、沖縄県警は、女性に性的暴行を加えた容疑で在沖海兵隊員を書類送検した。米軍関係者による性加害は今年4件目。ここ10年で最悪だ。加害者は基地に逃げ込み、県警は所属基地さえ明らかにしない。

 概算要求は全国基地「強靱化」の名で地下化、弾薬庫増強など8655億円を含む。基地被害も戦場化も、沖縄だけの問題ではない。

 声を上げ続ける沖縄・琉球弧に連帯し、全国に軍事化ノーの闘いを広げよう。戦争路線を突き進む自公政権の延命を、これ以上許してはならない。

 (9月7日)
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