2024年09月20日 1838号
【燃料デブリ取り出し失敗 汚染水は1年で6万トン放出 全く先の見えない福島廃炉】
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福島第一原発事故から13年半。廃炉など到底不可能と思わせる事態が続いている。この先、廃炉はどこに向かうのか。
下請けに丸投げ
8月22日、東京電力は福島第一原発2号機で燃料デブリ(原子炉内の核燃料が溶け落ちて固まったもの)の取り出しに着手する予定だった。だが、取出装置につなぐ5本のパイプの接続順が誤っていることが準備中に判明。作業を中断した。
パイプの接続順はあらかじめ決まっている。7月29日までに下請企業労働者がパイプ接続作業をした。ミスはこの際に起きたが、高線量で作業時間が限られるため、接続順を再確認する作業は行われなかった。
驚くことに、東電社員は29日の作業現場に立ち会わず、翌30日の事後確認でも見逃していたという。典型的な人為的ミスだが、人間が行う作業である以上ミスは付きもの。劣悪な高線量の現場を、労働法制による保護が弱い下請労働者に押しつけ、事後確認もおざなりですませた東電の責任だ。
東電は、デブリ取り出しを含む廃炉作業を40年で完了させる計画だ。だが、作業は人間が行うものだという基本すら認識していないのではないか。事故を起こした東電社員みずからは最も危険な現場には入りたくない――そんな姿勢で廃炉などできるわけがない。
東電は「原因調査の必要がある」としながら取り出し作業を再開した(9/9)が、以降の進展は不透明だ。
そもそも可能なのか
国・東電は、デブリ取り出し作業を「廃炉完了のために必要」だとする。だがそもそも実現可能なのか。それ以前に必要があるのか。疑問は尽きない。
今回、東電が取り出しを試みたデブリは耳かき1杯ほどのごくわずかの量だ。東京電力ホームページでは、燃料デブリの量は1号機279トン、2号機237トン、3号機364トン、合計約880トンにも上ると推定される。もちろん、デブリが飛び散っている圧力容器内は高線量で人は立ち入れない。格納容器も長時間の作業ができない高線量が今なお続く。圧力容器内の実態は今もわかっておらず、このデブリの総量も国際廃炉研究開発機構(IRID)による推計だ。
1986年に事故を起こしたチェルノブイリ原発では、燃料デブリは溶け落ちた後の形を模して「象の足」と呼ばれる。新潟県が設置した福島原発事故検証委員会が関係者から行った聞き取りでは、30年経過した時点でも線量は20〜30シーベルトあるとされる。人が浴びた場合、全員が即死するとされる線量(7シーベルト)の3〜4倍だ。
当然、事故からそれほど時間が経過していない福島原発の圧力容器内の線量はチェルノブイリを上回ると考えなければならない。しかも圧力容器内部の状況さえ把握できていない。廃炉自体「夢物語」に近い。
それだけ高線量のデブリを取り出せたとして、どこに持っていくのか。「発電所内に整備する保管設備に移送」し密閉保管(乾式保管)するというのが東電の回答だ。「その後の扱いについては、調査や研究開発等の成果をふまえつつ、処理に向けた検討結果を踏まえて決定」(東電HP)とある。事実上何も決まっていないに等しい。
地球を汚染する海洋放出
福島原発からの汚染水海洋放出が強行開始されて1年経った。作業は断続的に行われ1年間で6万トンが放出された。東電は「放出で不要になった汚染水タンクを撤去し跡地をデブリ置き場に使う」と説明するが、そもそも汚染水はデブリに触れて発生後、ALPS(多核種除去装置)で「処理」したものだ。
デブリ置き場を確保するには汚染水放出でタンクを減らさなければならない。汚染水を減らすにはデブリを除去しなければならない。福島廃炉の現在地は「解のない連立方程式」だ。
廃炉の工程・方法、汚染水管理・処理のあり方、労働者の被ばく管理。すべて抜本的見直しが必要だ。
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