2024年09月20日 1838号

【未来への責任(406) 自衛隊とヤスクニの今】

 8月3日、「平和の灯を!ヤスクニの闇へ キャンドル行動」が開催された。今年のテーマは「あなたは祖国のために闘えますか?〜自衛隊と殉国・ヤスクニ思想のいま〜」である。

 高橋哲哉さんが指摘したように、ウクライナ戦争、イスラエルのガザ侵攻など、世界のどこで戦端が開かれるか分からないという現在の情勢の中で、日本国内では自衛隊と靖国神社の結びつきが急速に強まっている。今年の1月9日に陸上幕僚副長を含む陸上自衛隊員22名が公用車を使って靖国神社を参拝した。昨年5月7日には海上自衛隊の初級幹部ら165名が昇殿参拝していたことも確認された。

 自衛隊と靖国神社の結びつきの象徴が、今年4月、靖国神社の宮司に大塚海夫元海将が就任したことだ。自衛官出身の靖国神社宮司といえば、1978年にA級戦犯合祀を行った松平永芳がいるが、海将のような幹部将官経験者が靖国神社の宮司になったのは、今回が初めてだ。

 また、靖国神社崇敬者総代に就任している火箱芳文元陸上幕僚長は「近い将来国を守るため戦死する自衛官が生起する可能性は否定できない。我が国は一命を捧げる覚悟のある自衛官たちの処遇にどう応えるつもりなのか」と主張。自衛隊が対外戦争に参加し、戦死者が出ること、そして「祖国のために命を捧げた英霊」として称えられることを本気で考えていることが浮き彫りになった。

 韓国からは、李熙子(イヒジャ)さん、朴南順(パクナムスン)さん、鄭倫R(チョンユンヒョン)さんが参加された。熙子さんは「韓国からいつも一緒に参加された遺族のみなさんが何人か病気で来られなくなった」とおっしゃっていたが、これが現実だ。

 しかし、「私は一人の戦争被害者として、戦争を防ぎ、あるいは平和を望む活動を続けなければなりません。いつまでできるかわかりませんが、これからも頑張っていかないといけないと思っています」と力強く訴えられた。私たちも東アジアで決して戦争を起こさせないために声を上げ続けなければならない。

 集会の前には、ノー!ハプサ訴訟の弁護団と原告団の会議が開かれた。昨年5月26日の第2次訴訟控訴審の不当判決を受けて、6月3日に最高裁に上告。今年の2月9日に上告手続きは完了した。

 この間、日本及び韓国で相談を重ねてきたが、新たに「孫の世代」による第3次訴訟の準備を始めることとなった。今回原告予定者が参加される予定だったが仕事の調整がつかず参加には至らなかった。「孫の世代」と言っても、私と同世代の50代だ。日本と韓国、事情は違えど、仕事、子育て、介護など負担の大きい世代だ。私自身も原告のつもりで共に踏み出していきたい。

(日本製鉄元徴用工裁判を支援する会 山本直好)

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