2024年09月20日 1838号

【みるよむ(706)/2024年8月17日配信/イラクの農業政策と農民の苦しみ】

 イラクでは、政府の農業政策の失敗のために農民がまともな収入を得られず、農業を放棄する事例が増えている。その背後にあるものは何か。2024年5月、サナテレビはイラク農業の惨状を明らかにした。

 イラクは世界的な大河であるチグリス・ユーフラテス川が流れ、文明のはじめから何千年も豊かな農業を営んできた。ところが、現在の政府の無策と腐敗によって、農業は破壊され衰退の一途をたどっている。

 政府による農業への支援は口先だけで全く行われなかった。種子や機械などにも支援はなく、農業生産は伸びない。さらに不振の最大の問題は干ばつだ。

 イラク全体の耕地面積は2700万ヘクタールだが、実際の耕作面積は3分の1以下の800万ヘクタールしかない。干ばつと水不足で、農作物がまともに育たないのだ。これに対し、政府は有効な対策を全くしていない。何千人もの農民が土地や果樹園から離れ、離農して都市に流入している。

 腐敗もひどい。南東部メイサン州では、農業銀行の取締役とその助手が80億ディナール(約8億円)を横領し、6億ドル(約850億円)を架空名義に融資する不正を行って重い禁固刑を受けた。

国内農業保護の放棄

 イラクの農民は、輸入業者との競争にさらされ低価格でしか農産物を販売することができず、苦境に追い込まれている。外国産農産物に対する国内農業の保護政策が取られていないのだ。

 これは、イランなど周辺諸国と強いつながりを持つ政党が、それら近隣諸国の農産物をイラクに輸出しやすくするために、農業を意図的に破壊しているからだ。

 イラクの農業の衰退は、グローバル資本とイスラム政治勢力の利権獲得のための農業つぶしが原因である。サナテレビは、農民と市民の生活を守るために不当な農業破壊を許さない闘いを進めようと訴えている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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