2024年09月27日 1839号
【ドクター/ガザ ポリオへの究極のワクチン≠ヘ停戦】
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イスラエルの大規模侵攻は、パレスチナ・ガザで25年ぶりのポリオを流行させました。ポリオは、四肢を動かせない、呼吸ができないなどの治療法のない「急性弛緩性マヒ」を永久に残すことがあり、大変危険な感染症です。すでに、7月16日に廃水からポリオウイルスが確認されており、この時点で緊急にポリオワクチンの投与が必要でしたが、イスラエル軍の攻撃のために不可能でした。
その後、8月中旬には赤ちゃんがマヒを発症、少なくとも3人の患者が報告され、その何百倍以上がポリオに感染していると予測されました。ポリオのイスラエルへの拡散も恐れたのか、9月1日、ワクチン接種の地域に限った戦闘の一時休止と接種が始まりました。
マスコミは、ポリオワクチン接種が順調と強調していますが、接種要員への卑劣な攻撃があり、接種直後に虐殺も再開されています。
報道ではワクチンを飲ませています。緊急のポリオ流行阻止には、日本で行われている注射でなく、より強い免疫力を作る飲む「生ワクチン」が必要なのです。
イスラエルによる大虐殺が始まって以降、ワクチン接種が不可能になり、未接種の子どもたちの間で流行し始めたと考えられます。それだけではありません。上下水道の崩壊などによる不衛生、絶え間ない攻撃からの避難、栄養不足がイスラエルによって作られたことで、ポリオが流行したのです。ガザ保健省が「イスラエルの壊滅的な軍事攻撃が致命的なウイルスの原因である」としているのは当然です。過去の例でも、アフガニスタンに残るポリオの根絶は、米軍の攻撃などで20年以上も遅れています。
世界的にもきわめてまれなポリオが流行したことは、より一般的で、はるかに多数を占める下痢・嘔吐症や呼吸器疾患などの多くの病気が流行していることを示唆しています。これらは、適切な治療があれば大部分は回復しますが、ガザの保健医療システムは崩壊状態。兵器による死傷に加え、病気での死亡や後遺症で苦しんでいる膨大な人びとがいるのは間違いありません。
世界的なガザジェノサイドへの抗議活動で、ワクチン接種のための停戦が実施されたことは前進です。しかし、「ポリオに対する究極のワクチンは、平和と即時の人道的停戦」(グテーレス国連事務総長)です。即時かつ永続的な停戦に向けた一層の闘いが必要です。
(筆者は小児科医) |
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