2024年09月27日 1839号
【兵庫県「維新系知事」の暴走/人命を奪った内部告発つぶし/万博絡みの不正隠しが背景】
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パワハラ疑惑、内部告発つぶしで大炎上中の斎藤元彦・兵庫県知事。唯一擁護してきた日本維新の会も世論の批判に屈し、「斎藤降ろし」に転じた。維新はなぜ暴走知事をかばい、告発者つぶしに加担し続けたのか。実は、ここにも「万博」が絡んでいた。
まるで独裁者の手口
9月19日、兵庫県議会の定例会が初日を迎える。本紙が皆さんの手元に届く頃には、斎藤知事に対する不信任決議案が可決され、失職か議会解散かの選択に注目が集まっているはずだ。
一連の騒動の発端は、前県西播磨県民局長のAさんが今年3月中旬、斎藤県政に関する疑惑を告発する文書を報道機関などに送付したことだった。同年4月には兵庫県の公益通報制度を利用し、文書と同じ内容を通報した。
しかし県は告発を公益通報として扱わず、文書を把握した直後から告発者の特定に動いた。3月27日、斎藤知事は告発内容を「ウソ八百」と否定。会見の場でAさんを「公務員失格」となじり、県民局長から解任した。さらに5月には、公益通報にもとづく調査の最中にもかかわらず、停職3か月の懲戒処分を下した。
公用パソコンを県幹部に押収され、私的情報をさらされることを危惧していたAさんは7月7日、「死をもって抗議する」というメッセージを残し亡くなった。自殺とみられている。
公益通報制度に詳しい奥山俊宏・上智大学教授は、兵庫県議会が開いた百条委員会に参考人として出席。県の対応を「圧迫的な事情聴取、解職、懲戒処分はすべて公益通報者保護法に違反する」「まるで独裁者が反対者を粛清するかのような陰惨な構図」と厳しく批判した(9/5)。
維新県議が恫喝
斎藤知事は総務省の元官僚で、出向した大阪府では財務部財政課長を務めていた。2021年7月、維新と自民の推薦で兵庫県知事選挙に立候補。元上司にあたる吉村洋文・大阪府知事(維新共同代表)から全面的な支援を受けた。
こうして誕生した「大阪以外では初の維新系知事」を維新は守ろうとしたのだが、それにしても一部県議らの振る舞いは常軌を逸していた。Aさんを名指しで「吊るし上げてやる」と公言。増山誠県議は県が押収したパソコンに保存されていたデータの全面公開を百条委員会に要求した。堀井健智衆院議員(比例近畿)に至っては、街頭で市民から質問を受けた際に、Aさんの私的情報を語って彼を中傷し、告発文書の信憑性を損なおうとした。
告発者の人格攻撃までして告発内容を否定しようとしたのは、維新にとって極めて都合の悪いことが暴露されていたからではないか。一体それは何なのか。
告発文書には7つの疑惑が列挙されていた。メディアの関心は知事のパワハラとおねだりに集中しているが、維新にとって本当にヤバいのは「阪神・オリックスの優勝パレードの寄付金集めのため、金融機関に補助金をキックバックさせた」疑惑であろう。
疑惑の優勝パレード
昨年11月、「兵庫・大阪連携『阪神タイガース、オリックス・バファローズ優勝記念パレード』〜2025年大阪・関西万博500日前!〜」と題したパレードが大阪市と神戸市で行われた。サブタイトルが示すように、大阪万博の機運醸成を狙い、大阪府が兵庫県を巻き込んで仕掛けたイベントである。
パレードの費用はクラウドファンディングで賄うとされたが、府や県が期待したほどには個人寄付が集まらず、地元企業からの協賛金に費用負担を依存することになった。告発文書はこの協賛金集めに不正があったと指摘していた。
「信用金庫への県補助金を増額し、それを募金としてキックバックさせることで補った」というのだ。実際、ある金融機関の幹部は「補助金増額と寄付はセット」「片山安孝副知事(当時)が『どうしても』と頼んできた」と証言している(9/10アエラ・ドット)。
告発文書で「一連の不正行為と大阪府との難しい調整に精神が持たず…病気療養中」とされていた担当課長は今年4月に亡くなってことが分かった。こちらも自殺とみられている。
万博盛り上げのために税金が不正に使われ、それに悩んだ担当職員が死に追い込まれた―。たしかにこれは、万博に対する世論の逆風に追い詰められている維新にとって、絶対に追及されたくないスキャンダルである。だから斎藤知事や彼の側近幹部と一緒になって告発内容を全否定しようとしたのだろう。
この先、斎藤知事が辞めたとしても、それで幕引きとしてはならない。「身を切る改革」と言いながら、自治体を支配し私物化してきた維新の闇を徹底的に暴く必要がある。 (M)
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