2024年09月27日 1839号

【どくしょ室/検証 政治とカネ/上脇博之著 岩波新書 900円(税込990円)/裏金許さぬ怒りの継続を】

 著者は、自民党派閥の政治資金パーティーに関わる政治資金規正法違反を刑事告発し、岸田首相退陣表明にもつながる裏金問題のきっかけを作った人物だ。

 本書では、自民党、派閥の「裏金」がどのようにつくられ、何に使われてきたのかを詳しく解説している。

 金権腐敗政治が問題となった1990年代の「政治改革」は政治資金規正法にさまざまな欠陥を残したばかりか、政党助成制度や小選挙区制度の導入を通じて日本の議会制民主主義のあり方をゆがめた。政党交付金、官房機密費、さらに「裏金」を使って「与党=内閣」が政治を私物化し、本来、権力の暴走をチェックすべき国会の機能は弱められてしまった。

 自民党派閥などの裏金問題の背景には、政治資金パーティーが企業献金の「抜け道」となっていたことがある。政治団体に対する企業や個人の寄付には年間の上限額が決まっている。しかしこのパーティー券購入には上限額がない。また20万円以下の購入者・団体については収支報告書への報告の義務もない。パーティー券の売り上げのほとんどが団体の収入になったのが実態だ。パーティー券を大量購入する企業をチェックできる収支報告制度がなく、派閥や国会議員は簡単に裏金をつくることできた。

 「政治とカネ」問題の元凶となっている現在のゆがんだ制度を根本的に改革しなければならない。政党交付金の廃止、「事実上の賄賂」である企業献金、その「抜け道」の政治資金パーティーの全面的禁止などだ。

 それには、怒りを持続させ声を上げ、主権者のための抜本的な政治改革を求め続けることが必要、と著者は訴えている。  (N)
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