2024年09月27日 1839号

【日本政府は誰を守っているのか/相次ぐ米兵の性犯罪 「通報手続」違反の責任を問う/「基地・軍隊を許さない」 政府交渉】

 沖縄で米兵の性犯罪事件が相次ぐ。隠蔽した日本政府の責任を追及する交渉が9月13日、参院議員会館で行われた。外務省・防衛省・法務省・警察庁・最高裁判所の担当官9人に対し、「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」の高里鈴代さんや伊波洋一参院議員が230人の参加者とともに厳しく問いただした。

 ポイントは、「事件・事故が地域社会に及ぼす影響を最小限にする」ため「情報を地域社会に対して正確にかつ直ちに提供することが重要」とした97年の日米合同委員会合意「在日米軍に係る事件・事故発生時における通報手続」。昨年12月の米空軍兵長による性暴力事件では、外務省は「非公表の事案」を理由に情報を提供しなかった。

 「被害者のプライバシー保護」の欺瞞性を高里さんが明るみに出す。「12月事件の公判で被害少女の証言は『遮蔽方式』により行われたが、カウンセラーを同席させた別室からのビデオリンク方式を採用すべきだった。少女は遮蔽された畳半分のスペースに7時間あまり閉じ込められ、自傷行為もあったと証言。これは二次被害だ。95年の少女暴行事件では、被害に遭った場所は特定されていない。今回『プライバシーの保護』と言いながら、実際に守っているのは米軍だ」

 伊波議員は問う。「被害者を支援する警察の『ゆいセンター』に連絡があったのは8月になってから。沖縄県の『性暴力被害者ワンストップ支援センター』とも連携がとれていない。被害少女のケアを妨げ、事件の再発を許したのは外務省ではないか」

 宜野湾市出身で、米軍機の部品が落下した保育園に娘を通わせていた明(あきら)有希子さんが涙ながらに訴える。「どうやって娘を守ろうかと思うばかり。省庁のみなさんは3年くらいで担当が代わるのだろうが、沖縄は3年後に変わることもできず、ずーっと過重な70%を押しつけられている。どうか助けてください」

 政府側は「係属中の事件なので答えを差し控える」「米側には常日頃から申し入れている」などと繰り返す。ただ、「沖縄で事件が多いのは全国の0・6%の面積しかない沖縄県に米軍専用施設の7割が集中しているから」とは認めた。

 通報手続の日米合意は22年以降、骨抜きにされている。伊波議員は「日本全国で米軍の演習が始まり、各地の自衛隊施設で弾薬庫の積み増しなど戦時体制づくりが進んでいる。それによって増える事件・事故を懸念しての通報ストップではないか」と分析した。

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