2024年10月25日 1843号
【石破の選挙公約/メニュー同じで激辛隠し味=^中小企業切り捨て アジア版NATO検討へ】
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「岸田では選挙に勝てない」と総裁をかえた自民党。結局、看板が変わっただけで、出されるメニューはほとんど同じだった。だが石破政権は後で効いてくる激辛隠し味≠フ分だけ危ういのだ。
裏金は「使う」
総裁選前、石破茂の人気は高かった。「週刊女性PRIME」が30代〜60代の女性500人に「首相になってほしい&なってほしくない総裁選候補」を聞いた(8/21)。石破は、「なってほしい」で2位(ほしくない方では4位、両方とも1位が小泉進次郎)。期待する声は「既存の自民党とは違う考え方を持っていて、今の自民党の派閥や風習をクリーンにできる議員だと思う」。
この「期待」はまったく見当はずれだ。石破は「既存の自民党」そのもの。総裁選での発言、所信表明演説、党首討論、選挙公約と場所場所で、前言とは違うことが言える。「誠実に、自分の言葉で」ウソがつけるのだ。
選挙公約を見よう。最初に掲げたのは「ルールを守る」。今選挙の最大の争点「政治不信」に対する自民党の答えだ。「ルールを守る」と公約にすること自体、情けないが、そこに書かれた「政治制度改革」がすでにごまかしだった。
公約には「将来的な廃止も念頭に、政策活動費の在り方、透明性の確保、…など政治資金制度改革に取り組む」としている。
政策活動費(政活費)は、政党から幹事長などにわたる資金で、領収書不要の使途不明金。「裏金」の典型だ。選挙のある年は20億円に近い額が使われ、当落を争う議員へのテコ入れ資金になってきた。公職選挙法で定める法定上限額をこえる支出にあてることもできる。脱法資金と呼んでいい。
石破は党首討論で「政活費を今回の選挙に使うのか」と聞かれ、「適法の範囲で使う」と答えた。そもそも「裏金」を生み出す仕組みを温存した政治資金規正法。公約の「ルールを守る」とは「ザル法」を有効に使うということだ。これで「国民からの信頼回復」ができるとするところが、有権者の感覚とずれている証拠だ。
「社会主義国ではない」
公約の2番目「暮らしを守る」。ここには物価高対策や社会保障、成長戦略や女性活躍など11項目が並んでいる。所信表明でふれた「最低賃金を2020年代に全国平均1500円」との方針は、公約では「最低賃金の引き上げの加速」にトーンダウン。目標とする額も時期も消えた。
最賃引き上げには中小企業への直接支援が必要だ。この点を党首討論で問われた石破は「我が国は社会主義国ではない。直接給付は正しいとは思わない」と拒否した。日本は資本主義国だから資本のために政治は行われるという意味で、石破の言うことは事実だ。
公約には「売上高100億円をめざす成長志向の中小企業には、国内投資・イノベーション・人材確保などを集中支援する」と書いている。これは、生産性の低い中小企業を淘汰(とうた)し、使い捨てできる労働者を生み出すことを狙った大企業のための政策なのだ。コロナ禍で中小企業支援策を並べた3年前の岸田政権時の公約を大きく変更した。岸田の経済政策をより大企業寄りに修正するつもりだ。
「核共有」へ一歩
公約の3番目「国を守り、国民を守る」。「安保三文書に基づき、防衛力を抜本的に強化する」。岸田政権が加速させた軍拡路線は変わらないが、石破の持論「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」の文言はない。諦めたわけではない。それを意味する表現は残している。「日米同盟を基軸に二国間・多国間の防衛協力・交流を推進するとともに地域の安全と安定を確保する取り組みを主導する」。石破はアジア版NATOについて、党の政策に押し上げるよう政調会長(小野寺元防衛大臣)の下で検討するよう指示した。
ただ、すでに多国間の軍事同盟、軍事演習は拡大し続けている。選挙期間中にも日米共同統合演習(10/23〜)が民間空港・港湾も使用し大規模に実施され、NATOからも招へいする。沖縄の辺野古新基地に併存する弾薬庫は核兵器貯蔵用に改築されている。「対等な日米同盟」をめざす石破が主張する在沖米軍基地の共同使用、「核使用決定権の共有」の実態が作り出されているのだ。
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石破の旧派閥「水月会」にも「裏金」があった。石破は「単なる事務的ミス」と岸田とそっくりの言い訳をした。岸田前首相を退陣させた怒りは、石破に代わってますます強くなっている。ノーベル平和賞受賞で注目される日本原水爆被害者団体協議会は石破の「核共有」論に対し「怒り心頭」と批判している。自公過半数割れに追い込み、政策転換を実現しよう。
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