2024年10月25日 1843号
【石破自民党 岸田継承の軍拡・増税/金融所得課税強化も放棄/法人税・富裕層課税強め 消費税は廃止だ】
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「(岸田政権の3年間は)幅広い分野において、具体的な成果が形になった3年」と石破首相は所信表明演説で持ち上げた。
だが、岸田政権の問題点は明らかだ。就任後、金融所得課税強化を打ち出したとたん、株価が連続して下落する「岸田ショック」に見舞われ「所得倍増計画」という「分配策」をすぐに引っ込めた。その後、NISA(少額投資非課税制度)など投資や資産運用を勧める方向に変わり、人びとの貯蓄をギャンブルに使えとなった。さらに、安全保障関連(軍事)3文書を改定して軍事費倍増を閣議決定だけで決めてしまった。
石破政権は、この軍事費倍増と投資路線を引き継いで総選挙に突入した。対決点の一つは、この路線を許さず労働者・市民への分配強化を行うかどうかである。
経済公約も岸田のまま
所信表明演説や自民党公約をみると、どこかで見たものが多い。「日本経済のデフレ脱却を確かなものにする」「消費と投資を最大化する成長型経済の実現」(所信表明)「成長と分配の好循環」「安保三文書に基づき防衛力を抜本的に強化」(政策パンフレット)。メディアも「政策の各論は前政権からの踏襲が目立った」(10/5朝日)と酷評する。
まず、軍事費倍増を見てみよう。2022年末に岸田政権が軍事費倍増とその財源確保を決めてしまった。23年度から27年度の総額を約43兆円とし、追加財源の4分の1、1兆円強を法人税、所得税、たばこ税の増税で生み出すという。25年度税制改定では、この財源問題が最大の注目点になる。
法人税増税に対して経団連は、10月3日発表の「令和7年度税制改正に関する提言」で釘を刺した。「法人実効税率への影響、企業による国内投資や賃金引上げの状況を十分に踏まえるべき」という。これは、法人税減税があっても実質的な税負担が続いているとして法人税増税に歯止めをかけるとの主張を意味する。それは、法人税減税のために消費税が増税されてきた事実(図1)、史上最高の内部留保額を更新し続けている事実を無視し、グローバル資本がさらに利潤を拡大しようとするものだ。
次に、投資路線を見よう。岸田政権は、22年11月の「資産所得倍増プラン」、23年4月の「コーポレートガバナンス改革」 に続き、「資産運用立国実現プラン」を23年12月に打ち出した。
石破首相は、10月3日開催の「資産運用フォーラム」に「『資産運用立国』の政策を着実に引き継ぎ、更に発展させる…内外からの投資を引き出す『投資大国の実現』を経済政策の大きな柱の一つ」とするメッセージを送った。岸田政権の投資拡大路線継承を国内外に明らかにしたのだ。
岸田も石破も「分配の必要」を口にし、当初その具体策に金融所得課税強化を挙げていた。ところが、株式市場の拒否感から株価が下落し、両者ともこの策を簡単に引っ込めた。分配を人気取りのための道具にしていただけであった。
市民への分配強化こそ
所得は通常、多ければ税率が高くなる累進課税とされる。ところが、金融所得には定率の課税となっている。1億円までは税負担率が上がっていくが、それを超えると下がっていく(図表2)。いわゆる1億円の壁≠ェ生じている。金融所得が多ければ多いほど、税負担が減るのだ。
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23年度税制改定で年間所得30億円を超える超富裕層300人程度に25年度から課税強化されるものの、実態は「所得50億円の人では2〜3%負担が増える見込み」(22年12/16朝日)程度。1億円の壁≠ヘ残ったままとなる。富裕層への適正な課税で労働者・市民への分配を強めるべきだ。
まず、軍事費拡大のための増税をやめて軍事費を削減し、法人税を以前の税率に戻し、富裕層に適正な課税を行う。消費税を廃止し、大幅賃上げ、最低賃金引き上げを実現する。これが分配強化の待ったなしの内容である。 |
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