2024年10月25日 1843号
【石破「健康保険証廃止は予定どおり」/マイナ保険証はヤバすぎる/個人情報だだ漏れの危機】
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「嘘つき」「手のひら返しだ」との批判を浴びまくっている石破茂首相。自民党総裁選で訴えていた主張をあっさり覆したり、トーンダウンさせたりしているからだ。12月に迫った現行の健康保険証の廃止(マイナ保険証への一本化)もその一つである。
また手のひら返し
「現行の健康保険証の新規発行終了につきましては、法に定められたスケジュールにより進めていきます」。石破茂首相は10月7日の衆院本会議でこう明言した。12月2日をもってマイナ保険証への原則一本化を実施するということだ。
この件について石破は自民党総裁選への出馬を表明していた9月8日、「期限が来ても納得しない人がいっぱいいれば(現行保険証との)併用も選択肢として当然だ」と語っていた。わずか一か月で保険証廃止に納得する人が激増するはずがない。「嘘つき」と批判されて当然だ。
大混乱は必至
政府がゴリ押しするマイナ保険証とは、マイナンバーカードに健康保険証の機能を持たせることを言う。その仕組みは、小泉進次郎風に言えば「意外に知られていない」。いや本当に知られていないので、まずはざっと説明しよう。
私たちは病院や診療所で診療を受ける際、健康保険証を受付に提示する。これは自分が加入している健康保険を利用するために、その種類や名称、被保険者番号を知らせる行為だ。この保険資格確認をマイナンバーカードを使い、オンラインで行うことを政府は原則として義務付けた。
医療機関の受付に設置されたカードリーダーにマイナンバーカードをかざすと、装置についているカメラが顔を映し、カードのICチップに記録されている顔写真情報と照合する。顔認証による本人確認である。本人確認は4桁の暗証番号の入力で行うこともできる。
本人確認がとれると、ICチップに記録されている公的個人認証用の電子証明書の発行番号(シリアルナンバー)が通信回線を使って支払基金・国保中央会に送られる。同会は届いた発行番号に対応した保険資格情報を医療機関の端末に返す―という仕組みだ。
マイナンバーと電子証明書の発行番号はカードの交付の際に紐づけられている(電子証明書機能の付与は希望による。有効期限は5年)。マイナンバーと健康保険の被保険者番号はすでに紐づけられている。つまりマイナンバーが鍵となり、発行番号と被保険者番号が結びつけられるというわけだ(この登録作業が初回利用時に必要)。
さて、オンライン資格確認自体はマイナンバーカードを使う必要はない。保険証の券面に記された情報を窓口担当者が入力すれば済む話である。手入力の手間やミスを失くしたいなら、被保険者番号をQRコード化する方法もある。それを保険証に印字し、機械で読み取ればいいのだ。
現在、全国の医療機関でマイナ保険証をめぐるトラブルが相次いでいる。カードリーダーの接続・認証エラーなどで資格確認できないことが多く、結局いまの保険証で確認しているという。廃止され、なくなれば、大混乱は確実だ。
保険証廃止の撤回を
オンライン資格確認の不具合が解消されたとしても(まず無理だが)、マイナンバーカードを保険証として持ち歩く以上、紛失や盗難の危険がつきまとう。数多くの個人情報が紐づいているカードが悪意の第三者の手に渡ればどうなるか。カードのセキュリティ機能は4桁の暗証番号だけなので、不正アクセスや「なりすまし犯罪」などの被害を受けるケースが多発することは目に見えている。
一般社団法人・情報システム学会マイナンバー制度研究会は次のように指摘している。いわく「便利だからといって(1枚のカードで)全ての本人確認機能ができるという安易な方向に流れてはいけない。現実世界の印鑑の使用に例えると、…常に『実印+印鑑登録証(印鑑登録カード)』を携行させる仕組みにしてしまうことと同義である」(2024年7月の提言)
同会はデジタル化推進の立場だが、危険すぎるマイナンバーカードは廃止し、機能を限定した3つの公的身元証明書(携帯せず厳重に保管するべきメインの証明書、新運転免許証、顔写真付き新保険証)を発行すべきだと述べている。
だが、政府は人びとにマイナンバーカードを使わせ(現行保険証の廃止はその手段)、あらゆる個人情報を集めることしか考えていない。儲けの種として企業に提供するほか、中国のようなデジタル監視体制の構築に使うためだ。
現行保険証の廃止、すなわちマイナンバーカードの取得・使用の強制を許してはならない。総選挙の争点の一つである。 (M)
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