2024年10月25日 1843号

【読書室/裏金国家 日本を覆う「2015体制」の呪縛/金子勝著 朝日新書 870円(税込957円)/民主主義破壊と腐敗の実相】

 本書の刊行は8月末だ。「裏金」問題を直接の契機とした岸田首相総裁選不出馬表明(8/14)に、著者は「退陣したからと言って、自民党政治の本質は何ら変わりません」と断じる。本書は、いま自公政治にノーを突きつける意義を改めてはっきりさせる。

 著者は現在の日本が「2015年体制」下にあると言う。この年、安倍政権が憲法違反の集団的自衛権行使可能を閣議決定のみで決めたことを契機に、世襲議員による支配と政治家の劣化が進み、象徴として脱税犯の裏金議員を生んだ。それが、民主主義と国民生活の破壊を一気に進めた。

 著者は、国家においても裏金をつくる構造が生まれ、ゆえに「裏金国家」と名づける。この裏金国家の実相を暴き、特に経済政策に焦点を当てて本書を展開する。

 裏金はどのようにして作られるのか。軍事費倍増に端的に見てとれる。「予備費を意図的に余らせて『決算剰余金』を捻りだし、基金も余らせてそれを削って『歳出改革』と称して防衛費を捻出」する。国会のチェックをすり抜け、まさに裏金と同じ構造ではないか。国家の累積赤字が積みあがっているのに多額の決算剰余金が出てくること自体がおかしい。ところが、マスコミは税収増から決算剰余金が出ていると報じ、実態を覆い隠す。裏金作りの手法は健康保険を悪用した少子化対策でも行われ、国家はますます腐敗していく。

 これを止める道は、「裏金を提供する者のためでなく困っている者のための政治へ」という政権交代以外にない。著者は、官僚制度やメディア介入の問題をはじめ、「税制と予算の組み替え」など政権交代後の政策も提示している。(T)
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