2025年01月31日 1856号

【コラム 原発のない地球へ/いま時代を変える(14)/再エネ転換で原発ゼロ達成は可能だ】

 第7次エネルギー基本計画が12月17日に発表された。計画案は、原子力産業推進委員で占められる経産省の諮問機関で「原子力はリプレース(取り換え)、新増設に向けた政策の具体化が必須」(橋本英二日本製鉄会長)など堂々と議論された。福島原発事故以来、「可能な限り原発依存度を低減する」とした基本方針は「原発の最大限活用」に大転換された。

 この転換を許した背景に、再生可能エネルギー転換への闘いの弱さが反映してはいないだろうか。福島事故後の2013〜2015年は原発ゼロだったが、それでも電気が足りていたのは、再エネの普及というより火力発電の復活によっていた。そもそも第6次の再エネの目標値は2030年度に36〜38%で、ソニーも加入する国際企業連合が50%、欧州連合が57%を打ち出す中、際立って低い目標値だった。第7次の2040年度目標値でようやく5割をめざすというが、逆に言えば、その程度では火力を削減できないので原発をもっと活用しようという話になる。

 シンクタンク「自然エネルギー財団」は2035年度に、蓄電池の大量導入、送電網の整備で原発・石炭火力全廃、再エネ構成比80%可能と試算している。反原発運動の側こそ2030年度に5割、2040年度は8割を経産省に要求していかなければならなかった。

 原発推進勢力は、再エネのコスト高、環境影響(太陽光パネルの山傾斜面設置による自然破壊)、公害(老朽パネル大量処分による有害物質発生)などを挙げ、再エネ推進を躊躇(ちゅうちょ)させてきた。しかしこれらの課題解決の道筋は明確で、現実に進行している。「2040年度時点のコスト(1kW/時の費用)」は、経産省発表ですら、原子力が11.7?12.5円に対し、事業用太陽光は8.5?11.2円と低い。それも、原子力のコスト計算を低く見積もった中での比較だ。

 太陽光に限れば、以前の、山林などを切り開いたメガソーラー設置から、農林業との共存をめざす営農型太陽光発電への移行が進んでおり(全国で2021年に3474件)、「耕作放棄地の活用で原発31基分の発電量を確保」との試算もある。建物の屋根・屋上などへのパネルも補助金を利用して安価に設置できる状況になってきた。一方パネル処分はリサイクル技術の進展で有害物解消の方向にあり、今後は曲がる太陽電池・ペロブスカイト型導入で2040年度には原発20基分の発電量も可能という。新たなダム建設はなしで既設のダムの水力発電や小水力発電の活用、陸と海洋の風力発電、地熱発電、“地産地消”型開発の余地も大きい。環境破壊を伴わない再エネ普及の考えは今や主流だ。

 原発推進勢力は、「脱炭素」「AI需要拡大」「エネルギーの安定供給」を原発回帰の理由にあげる。しかし原発こそウラン資源の海外依存で政情等に左右される。また、2010年から2020年の10年で最終消費電力量は9870億KW、約12%も減少していた。今後は人口減、省エネの進行で総需要の減少すら予測されるが、電力中央研究所による将来予測でも、2050年の最小値は8290億KWで大幅減、最大値の場合も1兆750億KW(880億KW増)で年0.3%増に過ぎない。電力需要の大幅拡大に根拠はない。

 放射能汚染水・汚染土、使用済み核燃料は溜まる一方で、最終処分のめどすら立っていない。テロ・ミサイル攻撃で狙われる原発施設。地球環境破壊と命と健康を脅かす原子力に全く未来はない。(Y)
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