2025年01月31日 1856号
【読書室/教員不足 誰が子どもを支えるのか/佐久間亜紀著 岩波新書 960円(税込1056円)/公立学校はみんなのもの】
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小中学校、さらには高校も含め教員不足≠ェいわれて久しい。著者は、誰にとっての不足なのか(=数値基準でなく子どもにとって)、その視点から現状と原因に迫り、改善に向けた方向性を提言している。
公立小中学校の教員の配置定数は、その学校の学級数をもとに国の算出基準によって決定される。ただ、定数通りの正規教員が配置されているわけではない。1人の正規教員の給与分で2人の非正規教員におきかえているケースも多い。
2008年からは給与の負担が国と都道府県が二分の一ずつから国が三分の一に減り、地方の財政力で地域間格差が拡大した。公務員削減とあいまって、構造的教員不足の一因となった。
「いじめ・不登校対応」「外国人への日本語教育」などの理由で「加配」教員の配置もある。しかし、その予算は次年度もつく保障がないため、非正規教員に充てられる場合が多い。
不足解消へ、教員免許を持たない社会人を活用する試みを文科省は進めるが、数合わせの社会人導入は、教育本来の専門性を奪い、公教育の破壊につながる。アメリカでは多くの州で軍人を教壇に立たせる例があることを著者は紹介する。
著者は、「少子化だから教員採用を減らす」のではなく、生徒数あたりの正規教員数を大きく増やすチャンスと主張する。「35人学級」実現が教育効果のみならず、教員の労働環境改善につながり、教員の授業時間数の上限を定めることも有効な対策と言う。
そして、軍事費大幅増を「必要だから財源確保する」という政府に、教員不足の解消を「財源がない」ということはできないはず、としている。(N) |
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