2025年02月14日 1858号
【予算国会山場 抜本的修正を/少数与党石破政権を追いつめるチャンス/軍事費削減 命とくらしに回せ】
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国会は2月後半、予算案年度内成立の山場を迎える。少数与党石破政権に抜本的な修正を迫る重要な時期だ。「地方創生」を掲げながら、沖縄の民意を踏みにじる石破茂首相。軍事費8・7兆円を大幅に削減させ、社会保障関連費を充実させることが必要である。人殺しではなく、命やくらしを優先する政策への転換を勝ち取る一歩にしよう。
自治破壊の「地方創生」
沖縄辺野古新基地建設工事は大浦湾軟弱地盤への砂杭打設を始めた(1/29)。国土交通大臣が沖縄県知事の権限を取り上げて、工事を承認してから1年。沖縄防衛局は地盤調査のデータ開示を求める声を無視し、強行。工事の安全性への疑問、環境破壊の恐れという県の判断を政府は踏みつけにした。「代執行」はあらためて、国と自治体の関係が対等ではなかったことを見せつけた。
石破茂首相は施政方針演説で「楽しい日本」をめざすと語った。野党だけでなく、自民党からも批判が相次いだ。実際、生活の苦しさや経済の厳しさという現状認識からすれば、的はずれであるのは間違いない。
だが石破は「楽しい日本」とは「今日より明日はよくなる」と実感できることだと解説し、その政策の核心は「地方創生2・0」だと位置付けている。
10年前、第2次安倍政権で初代地方創生担当大臣となった石破は今回「2・0」とし、その違いを見せようと5本の柱を提示した。だが、「これまでとの違いは何か」と聞かれても、資本の投資先としてしか地域を見ていない従前どおりの答弁しかしなかった。
「地域の力が発揮できる環境整備をする」「国の職員が、課題を抱える市町村に寄り添って伴走支援を行う仕組みを始める」と施政方針で述べた石破だが、「地元に寄り添う」と言いながら沖縄に対して、民意を踏みつけ基地建設を強行してきたその張本人ではなかったか。
沖縄県は地域発展の最大の障害物は基地であり、基地撤去が最大の「地域おこし」になると訴えてきた。政府は、この声には一切応えなかった。
国と地方の対等な関係を崩し、政府の政策に逆らうものを踏みつけてきたその構図を変えない限り、地方が活性化することはない。
もう一つの列島改造
石破は政治の師と仰ぐ田中角栄元首相の「日本列島改造」を引いて、自らの看板政策「令和の日本列島改造」を掲げた。
東京一極集中を課題とする点で同じだが、田中「改造」は東京集中を促進する要因となった。石破「改造」も結果的に変わらない。総務省の発表(1/31)では東京集中はコロナ禍の前の水準に戻り、40道府県で流出超過になったという。「地方創生」をうたって10年、地方自治を蔑(ないがし)ろにする政策では地方の疲弊にブレーキはかからなかったのだ。
より危険な、もう一つの列島改造が今、進められている。全国で自衛隊基地の強化がはかられ、列島全体を対中国ミサイル最前線基地にする計画だ。
5年間で43兆円を投じる軍拡計画。その内4兆円をかける「基地強靭化」は過去2か年で既に1兆円以上支出し、25年度予算には約7000億円を計上。中でも弾薬庫は13施設で新設計画が進められている。「未定」とされていた鹿児島県さつま町でも調査費が計上されたという(1/19しんぶん赤旗)。
弾薬庫にどんな弾丸を入れるのか。防衛省は明確に答えていない。長距離ミサイルを大量に備蓄するために、32年度までに大型弾薬庫130棟を増設する計画がある。関西文化学術研究都市として開発された大規模住宅地に近接する京都祝園(ほうその)弾薬庫をはじめ、生活の場に弾薬庫を増強して、「楽しい日本」「地方創生」などありえない。
沖縄の辺野古新基地と一体のものとして米軍辺野古弾薬庫の増改築工事が行われている。その弾薬庫は「核弾頭」用の仕様でつくられており、設計は日本が行なった。日米両軍の一体化が進み、核抑止を公言する石破政権で、自衛隊弾薬庫もまた「核弾頭」仕様で建設される可能性は否定できない。
根本的予算組み替えを
石破の言う「今日より明日はよくなる」と実感できるためには、戦争の危険を取り除き、平和を確かなものにすることが大前提だ。軍事費削減は、軍事緊張を低減するとともに、その分を社会保障関連費に回せば、市民生活にとって2倍の効果が期待できる。
ところが、焦点になっている予算修正の議論に、軍事費削減があがらない。立憲民主党、国民民主党、日本維新の会などの修正要求には、ガソリン税暫定税率廃止(1・5兆円)、学校給食無償化(0・5兆円)、高校授業料無償化(0・3兆円)、介護・障害福祉事業者処遇改善(0・43兆円)、「年収103万円の壁」解消(7〜8兆円)などしかない。
野党は軍事費8・7兆円の大幅削減を掲げるべきだ。挙げられた教育、福祉の改善、所得税の控除額引き揚げの財源は、軍事費削減で生み出せる。
だが、予算の根本的修正要求を牽制する動きがある。憲法には予算提案は内閣の職務とされている。国会が大幅に修正を加えれば、「内閣の予算編成権を侵す」というのである(白?大学教授藤井亮二1/31毎日)。政府も「国会の予算修正は、内閣の予算提案権を損なわない範囲において可能」(1977年2月衆院予算委内閣法制局長官答弁)との見解だ。国会が修正できる範囲は過去の修正事例から「1兆円が目安」(藤井)だという。
しかし、国会には予算審議権がある。当然、修正を前提としている以上、制限があるはずがない。徹底して予算のあり方を追求し、まず、内閣に修正を迫ることだ。応じなければ、国会が修正を加えればよい。内閣は国会の決定に従う以外にない。なによりも、有権者の声が決めることなのだ。
軍事費を教育、福祉、医療など市民の命とくらしに回せ。これを実現する予算修正になんの制限もあってはならない。
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埼玉県八潮市の道路陥没事故は下水管の老朽化が原因だった。全国には同様のリスクを持つ下水管が約3400`b存在するという(1/31日経)。政府は2015年下水道法を改正し、一定の条件に当てはまる管路は5年に1回以上の点検を自治体に義務付けたが、それだけで事故を防ぐことはできない。
インフラの老朽化は橋梁や河川施設でも進行している。ここでも政府は点検を義務付けるが、それを担う職員がいない自治体は多い。補修する予算がない。政府による長年にわたる公務員削減、外注化誘導策が、自治体から基礎体力を奪ってきた。「地方創生」は自治否定、自治体破壊の政策転換から始める必要がある。

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