2025年02月21日 1859号
【みるよむ(723)/2025年2月8日配信/クリスマスや新年のお祝いにかけられた憎悪攻撃】
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さまざまな宗教が長年共存してきたイラクでは、キリスト教に由来するクリスマスや新年のお祝いが行われてきた。ところが、イスラム政治勢力がこの行事に対して憎悪を煽り、攻撃をかけている。12月、サナテレビがこの問題を報道した。
イラクはイスラム社会のように言われているが、イスラム教徒の他にキリスト教徒やヤジディ教徒もいる。キリスト教と関係が深いクリスマスや、大みそか、新年の行事も行われてきた。
ところが、21世紀の現在、イスラム教徒の一部が大みそかの行事にボイコットや反対する攻撃をしかけている。こうした行事は西洋やキリスト教文化と結びついており、「イスラムのアイデンティティーを脅かす」と言うのだ。
聖職者がクリスマスや新年の祝典に参加しないように呼びかけるだけでなく、他の宗教に対する憎悪を煽っている。映像では、街頭の大きなクリスマスツリーがひっくり返されている場面が映し出される。新年の飾りを売る店を破壊したり、新年を祝う家族を脅す事例も多数起こっている。
攻撃に沈黙する政府
中部のカルバラ州知事は、商店、レストラン、カフェーでクリスマスツリーを飾ってはならないと命令した。カルバラの聖廟の指示に違反したとして、実際にレストランが閉鎖された。
宗教の違いを口実にした攻撃など許されてはならない。しかしこうした行動に対してもイラク政府は沈黙を守っている。このように社会的少数者に対して憎悪をあおり攻撃する背景には、政府、権力者が人びとを都合の良いようにコントロールしようという意図がある。
サナテレビは「寛容と共存という価値観が生き残る希望がイラクにある」と述べる。イラクには政教分離とすべての人の平等を求める市民、労働者の闘いがある。分断攻撃を許さず宗教による支配に反対しようと呼びかけているのだ。
(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)
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