2025年02月21日 1859号

【原発賠償京都訴訟/大阪高裁判決は欠陥判決=^最高裁の不当判決は最高裁でただす!】

 12月18日の大阪高裁判決(牧賢二裁判長)は、国の責任に関しては6・17最高裁判決の結論部分のコピペ、避難の必要を認める避難の相当性では避難開始を一審判決(京都地裁浅見宣義裁判長)よりも3か月短縮した「2011年12月31日」までとし、それ以降に避難を開始した場合は避難の相当性を認めないとしました。

権限不行使を判断せず

 牧判決は6・17判決と違い、政府の地震本部が公表した「長期評価」により、近い将来巨大津波が福島原発に到来することを予見できたとしました。だとすれば、そのあとに経済産業大臣が技術基準適合命令(津波対策)を命じなかったことは法令違反かどうかの判断が続くべきですが、それには触れず、対策を命じれば津波の浸入を防げたかの検討に移り、「仮に津波対策を命じていたとしても…本件事故と同様の事故が発生するに至っていた可能性が相当にある」というコピペが続き、国に賠償責任はないと結論づけたのです。

 巨大津波が来ると認識したにもかかわらず、国が東電に対策を命じなかったことを検討すれば法令違反とせざるを得ず、「国に責任なし」という結論に持っていけないと考えたのでしょう。しかし、規制権限の中身と権限不行使の違法性に関する考察を避け、仮定の積み重ねで結果回避はできなかったと結論づけた牧判決は法的論理性を欠き判決の体を成していない"欠陥判決”にほかなりません。

 それにしても、6・17判決以降、原発賠償訴訟に関しすべての高裁・地裁でコピペ判決が続いている状況は異常で、「裁判官は良心に従って独立して職権を行なう」という憲法の規定とはかけ離れています。

中間指針を上回る内容も

 不当な牧判決ですが、一審判決で認められた成果がすべて取り消されたわけではありません。自主的避難等対象区域に準じる区域≠判断するために一審判決が設けた基準は踏襲され、福島県会津地方の金山町(かねやままち)、県南地域の白河市、茨城県北茨城市、栃木県大田原(おおたわら)市、千葉県柏市からの避難の相当性が認められました。これは原賠審(原子力損害賠償紛争審査会)の中間指針の適用範囲が実態に合っていないことを示すものです。また、避難開始から2年間の避難期間を認めるという一審判決も踏襲されました。中間指針を上回る部分をどう反映させていくのかは今後の課題です。

 その後1月4日、判決を受けた55世帯166名のうち39世帯94名の原告が最高裁に上告しました。

"一人じゃない"と原告ら

 2月2日には京都訴訟団として「大阪高裁(牧賢二裁判長)の不当判決は許さない!最高裁での勝利をめざす集い」を開催。会場約50名、ズーム参加63名と関心の高さがうかがえました。

 弁護団から大阪高裁判決の説明・解説があったあと、すでに最高裁第1小法廷に係属中の2つの訴訟団から連帯のあいさつを受けました。だまっちゃおれん愛知岐阜の岡本早苗原告団長は「何をしたらいいのかと悩むこともあると思うが、一人でも多くの原告さんに東京に来てほしい」と原告に語りかけ、かながわ訴訟の村田弘原告団長は「最高裁に対しては理論的に争うのと並行して、外から『正しい判断を示せ』と迫る必要がある。いまも高裁で12、地裁で9訴訟が闘っており、まだまだ裁判闘争は終わらない」と激励しました。

 原告からは会場の5名、ズームで5名が発言。「しばらくは落ち込んだが、この裁判は自分だけでなく子どもたちのためでもあると思い直した」「判決を受けて気力がなくなった。でも東京に行けば、いろんな訴訟団の人たちと知り合えて、もっと元気になれるのではないか」「ズームを含めて100人の方の参加に勇気をもらった」「こういう場に来ると一人じゃない≠ニ思う。皆さんの支援があったからここまで来れた。これからも闘っていこうと思う」「悔しくて頭に来た。三権分立を本当に確立した国にしていかねばいけない」など思いを語りました。

 最後に、支援する会の奥森祥陽事務局長が「最高裁の不当判決は最高裁でただす」として今後の取り組みについて報告し、最高裁闘争への支援カンパを呼びかけました。ぜひ、ご協力を!

▼振込先 ゆうちょ銀行
口座記号番号00930-0-172794 加入者名 原発賠償訴訟・京都原告団を支援する会

(原発賠償訴訟・京都原告団を支援する会事務局 上野益徳)

MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS