2025年02月28日 1860号

【みるよむ(724)/2025年2月15日配信/イラクの刑務所で続く拷問/定員の何倍も収容】

 イラクでは、刑務所に収容されている受刑者が死亡する例が増えている。その原因は、劣悪な生活環境であること、そして、刑務所内で拷問が行われていることだ。12月、サナテレビはこの問題に焦点を当てた。

 まず、刑務所の「過密で劣悪な生活環境」が報告される。国内に13か所の刑務所があり、定員は2万人。ところが実際に収容されている受刑者数は6万人に及ぶ。定員の300%だ。イラク第二の都市バスラでは500%にも達する。

 映像は、広間か体育館のような床に、受刑者がぎっしり詰め込まれて寝ている姿を映し出す。これでは「換気や衛生の欠如による健康問題」が引き起こされるのは当然だ。「呼吸器疾患や深刻な精神疾患などの慢性疾患にかかる可能性が高い」「医療の怠慢により50人の収容者が死亡」という報告には胸が痛む。

 人間らしい衛生的な居住環境にしさえすれば、このような問題は起こらないはずだ。イラク政府当局の人権無視に怒りがわく。

 サナテレビは「受刑者が死亡する最も顕著な理由は、彼らが受ける拷問です」と指摘する。受刑者が肉体的精神的拷問を受けている報告が多数上がっているのだ。

 最近、中南部ナジャフで、ある受刑者が腎不全によって死亡したと当局は発表した。しかし、遺体には電気による拷問の跡があった。死の直前のビデオで、彼は自分を拷問した者たちの名前を口にしている。

自殺に追い込まれた人も

 拷問による自白の強要で、裁判も受けずに多くの受刑者が刑務所で過ごしている。政治的宗教的な理由で拘束された人もいる。絶望的になって自殺に追い込まれた人も出ている。

 サナテレビは「拘禁のあらゆる段階で、人権を尊重するために政府と国際社会が真剣に行動しなければなりません」と、民主化の一環として刑務所での人権侵害をなくそうと訴えている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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