2025年03月07日 1861号

【パレスチナ 停戦第2段階へ/恒久停戦へイスラエル軍の完全撤退を/ジェノサイド戦争犯罪を許すな】

 パレスチナでのガザ停戦合意はイスラエル軍の完全撤退、恒久停戦の第2段階が焦点になっている。だが、停戦合意のゴールは難民の帰還権保障であり、ガザ・ヨルダン川西岸・イスラエル領内でのパレスチナ解放でなければならない。100年にわたる入植者植民地主義を終わらせるため、ネタニヤフ政権、トランプ政権を追いつめよう。

停戦破壊を封じる

 停戦合意の第1段階は3月1日に終了するはずだった。1月19日からの6週間で、ハマスは合意した「人質33人(遺体を含む)」を解放すると表明している。だが、イスラエル軍は130人以上のパレスチナ人を殺害。6万戸のプレハブ住宅、20万張のテント、がれき撤去のための重機の搬入を妨害した。パレスチナ人の解放を渋り、第1段階の終了に障害を持ち込んだ。



 イスラエルはハマスを挑発し、停戦合意破棄から戦闘再開を狙っている。「停戦合意は徐々に崩壊する」とイスラエルは表明。新たな「攻撃と防衛」戦争計画を承認しているという(2/19Mondoweiss)。米大統領トランプもまた「15日までに人質全員を解放しなければ、地獄が始まる」(2/10)とハマスに圧力をかけていた。

 ハマスは当初、イスラエルの停戦違反に対し一旦表明した「人質解放」延期から解放へと転じが、イスラエルは最終局面で、「ハマスが人質を侮辱した」と新たに難癖をつけたため、ハマスも再度、硬化した。

 イスラエル、米国による停戦破棄、戦闘再開の策動は執拗だ。この第1段階の推移が示すように、第2段階を着実に進めるには両国の停戦破壊策動を不断に押しとどめなければならないということだ。

 速やかに第2段階に入り、イスラエル軍の完全撤退、恒久停戦を実現しなければならない。

戦争継続を正当化

 第2段階の先行きは現時点(2/25)では見通せないが、イスラエルはハマスの武装解除とガザ統治からの排除を要求すると報道されている(2/19DropSiteNews)。ハマスはガザ統治から離れ、統一政府による統治を受け入れる意向を表明しているものの、武装解除は拒否している。

 ネタニヤフ政権はあくまで「テロ組織ハマス」に対する自衛権行使を掲げ、戦闘の正当性を主張している。「ハマス解体」はイスラエル国内にむけた戦争継続の大義名分であり、国際法違反との追及をかわす理屈にしているのだ。

 そのためにも、国際刑事裁判所(ICC)がイスラエル首相のネタニヤフと前国防相ガラントに戦争犯罪の容疑で逮捕状を出したことに対抗手段を講じ、その影響を最小限に食い止めようと必死になっている。

 イスラエルの国会は、2月19日、国民や当局・公的機関がICCに協力することを禁止する法案を事前手続きの段階で承認した(2/19ハアレツ紙)。「ICCの活動はイスラエルとその代理人に重大な脅威を与えている」と法案の必要性を説明している。違反者には最高5年の懲役刑が科せられる。この法案が可決されると、イスラエル軍の犯罪を記事にしたジャーナリストも懲罰の対象とされてしまう。

 ICCに対する非難、中傷に米政府も口をそろえている。ICC職員への制裁法は、連邦議会は否決したものの大統領令(2/6)により、逮捕状を請求したカーン主任検察官の米国資産を凍結した。大統領令には「米国の安全保障と外交政策に対する異常な脅威、国家非常事態を宣言する」とまで書いている。

 ICCの逮捕状はそれだけ大きな圧力になっているということだ。

反パレスチナ法に対抗

 大統領令だけではない。米連邦議会にはイスラエル批判を反ユダヤ主義と同列視し、犯罪視しようとする「反ユダヤ主義啓発法」が再提出されている(2/12JewishInsider)。狙いは大学キャンパスでのパレスチナ連帯行動の弾圧にある。提案議員の一人は「全国の大学キャンパスが反ユダヤ主義の温床となり、ユダヤ人学生の権利が脅かされている」と法案の必要性を語っている。実効性を持たせるために、「反ユダヤ主義者」を摘発する「監視員」を大学に配置する法案もあわせて提出されているのだ。

 また、BDS(ボイコット、投資引き揚げ、制裁)運動を敵視する法、決議などが2014年以来、各州で採択され、24年末現在38州に及んでいる。州により違いはあるが、州政府との契約を望む企業にはイスラエルをボイコットしない旨の誓約書を提出させること、イスラエルをボイコットする事業者には公的資金を投資しないことが柱だ。

 トランプ1期目の18年には、反イスラエルボイコット法が成立している。アラブ諸国など外国政府の要請を受け入れ、イスラエルボイコットに加担することを禁じる法だ。現在、外国政府だけでなく、国際政府機関に範囲を拡げる改悪案が提出されている。「事実上、イスラエルと入植地企業をボイコットする権利を市民から奪うもの」と批判されている(2/18Mondoweiss)。

 大学でのテント闘争やBDS運動は、親イスラエル勢力に大きな圧力となっていることがわかる。

反アパルトヘイト行動へ

 トランプは1期目を終える時に、パレスチナ「和平案」を示していた(20年1月)。ヨルダン川西岸のユダヤ人入植地のイスラエル主権を容認、パレスチナ難民の居住地に第三国を提示するなどを含む。「2国家共存」と言いながら、パレスチナを植民地に据え置く案だった。2期目のトランプは、ガザ所有発言など1期目以上の厚かましさを示している。イスラエルも「25年は西岸併合の年だ」(財務大臣スモトリッチ)と公言する。

 恒久停戦からパレスチナ解放へ進むには、米、イスラエルの無法者を抑え込むこととともに、この両者を擁護する日本政府の責任を追及しなければならない。

 パレスチナBDS全国委員会(BNC)は3月21〜30日のイスラエル・アパルトヘイト週間(IAW)の行動を呼びかけている。



 3月21日は国際人種差別撤廃デー。1960年のこの日、南アフリカでアパルトヘイトに反対するデモ隊を警察官が銃撃。69人が犠牲となった。30日はパレスチナの「土地の日」。76年、土地の強奪に抗議するデモ隊をイスラエル治安部隊が弾圧、6人が殺害された日だ。今年はBDS運動20周年の節目の年。全世界での取り組みが期待される。



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