2025年03月07日 1861号
【兵庫県知事選でのデマ拡散/N党・立花のネタ元は維新だった/「思いはわかる」とかばう吉村】
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昨年11月の兵庫県知事選挙ではデマと誹謗中傷が飛び交った。その発信源となった「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首に対し、日本維新の会所属の県会議員がネタを提供していたことが分かった。
非公開データを提供
一人は岸口実県議。彼は斎藤元彦知事に対する内部告発を調査する百条委員会の副委員長でありながら立花と密かに接触。百条委委員である竹内英明元県議らを「斎藤知事の失職を狙った黒幕」と名指しする文書を手渡した。
もう一人は増山誠県議である。彼は非公開で行われた証人尋問の録音データを立花に提供した。内容は、斎藤知事をパワハラ等で告発した元県民局長の私的な情報を片山安孝前副知事が勝手に話し始め、百条委の委員長に制止された場面のやりとりだった。
さらに一人いた。白井孝明県議である。彼は立花の情報発信力に興味を持ち、元県民局長に関して「自分が知っている噂レベルの話を伝えるため」に立花と連絡を取ったという。
斎藤応援が目的と表明して知事選に立候補した立花は、街頭演説やネット動画で「内部告発は斎藤降ろしの陰謀」「告発文書は竹内の創作」などと吹聴しまくった。このデマがSNSで広がり、選挙結果(斎藤の再選)に影響を与えたと言われている。
優勝パレード疑惑
非公開の議事の漏洩は県議会の規則で禁じられている。これを破った増山らの行為を維新の吉村洋文代表(大阪府知事)は「ルールに反している」と批判した(2/20)。その一方で「本人たちの思いがあるのはわかる」とも語った。
「思いはわかる」とはどういうことだ。「内部告発はデタラメ」という印象操作を立花の手を借りて行ったこと自体は維新の所属議員として正しい行為だったとでも言いたいのか。おそらくそうなのだろう。
元県民局長の内部告発には、大阪と神戸で行われた「阪神・オリックス優勝パレード」をめぐる補助金疑惑が含まれていた。募金で運営するつもりが兵庫県では予定額に達せず、信用金庫への県補助金を増額し、それを募金としてキックバックさせることで補ったという疑惑だ。
優勝パレードは大阪・関西万博の宣伝のために吉村が主導したイベントだ。その不正が公になれば、維新が全精力を投入してきた万博の致命傷になりかねない。斎藤の再選によって疑惑の追及を封じるという動機が維新にはあるのである。
幕引きを許すな
さて、N国党・立花と維新の連係プレーは意外ではない。両者は似た者同士だからである。「維新は『ホワイトカラーに狙いを定めたN国党』であり、N国党は『下層・旧中間層に狙いを定めた維新』である」。『「NHKから国民を守る党」とは何だったのか?』の著作がある「選挙ウォッチャーちだい」はこのように指摘する。
反知性主義的な傾向があり、現状の生活に不満を抱いている人びとに対し、両者は「仮想敵」を提示することで、それを激しくやり込める自分たちへの支持につなげてきた。「やってる感」の演出に長けていることも共通点だ。
ほかにも「反人権」「モラルの欠如」「品性下劣」など、維新とN国党の共通点は枚挙にいとまがない。維新の県議にとって立花は「援軍」であり、近づいて利用することに何の抵抗もなかったのだろう。
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誹謗中傷を受けた竹内氏は県議を辞職。失意のうちに亡くなった(自死とみられる)。岸口は維新を除名となり、増山は離党勧告を受けたが、その程度で幕引きすることは許されない。維新、立花、斎藤県政という「疑惑のトライアングル」を徹底的に追及することが求められている。
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