2025年03月07日 1861号

【「議会を変える、市民と変える」/京都府向日市議 杉谷伸夫/貴重な自然と憩いの空間を守る】

 向日(むこう)市は、面積わずか8平方q弱の、西日本で一番小さな市です。古いまち並みが形成されていた上に、1960〜70年代前半に住宅街が集中的に造成されたため、道は狭く広い公園もありません。京都市からまちの西方に延びる竹林が唯一の緑地帯で、一部に残された田畑が貴重な開放空間となっています。

 そのため向日市の都市計画マスタープランは、市街化調整区域(開発を禁止し市街化を抑制する地域)の農地をすべて「田園緑地地区」として保全をうたうなど、身近な緑の空間を守ることを市の計画に定めてきました。

 ところが近年、事態は一変しました。鉄道駅近くに広がる農地は利用価値が高いと目をつけられ、開発して企業等の誘致が進められてきました。変則的な手法を導入して、本来開発ができない地域の開発ができるように変えられました。すでにJR向日町駅の近くの広大な農地には、ニデック(株)の第二本社ビル群の建設が進み、阪急洛西口(らくさいぐち)駅近くには商業施設等の開発が始まっています。都市計画マスタープランも、残された農地のすべてを「田園緑地地区」から「土地利用転換地区」と「土地利用調整地区」に変更されてしまいました。

 開発、企業等の誘致で「活力とにぎわい」「税収増」が無条件の価値のような空気が、市政と議会を覆っています。JR向日町駅周辺の再開発で京都一高いタワーマンションの建設や、向日町競輪場敷地内に京都最大のアリーナを誘致することもその一環です。

 しかし市民は冷静で、決して多くの方が歓迎しているわけではありません。タワマンを懸念する声は今なお強く、アリーナ誘致による交通渋滞・環境悪化を懸念して、1月の市民集会には過去最大の市民の参加がありました。

 3月初めから市議会の一般質問と予算審議が始まります。私は、市民の望む静かな生活空間を守るため、開発による「活力とにぎわい」「税収増」一辺倒のまちづくりでなく、貴重な自然と憩いの空間を守ることを求めて論戦してゆきたいと思っています。

MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS