2025年03月07日 1861号

【コラム 原発のない地球へ/いま時代を変える/(16)原発は自国に向けられた核兵器】

 昨年の総選挙によって自公政権は少数与党政権になったが、岸田政権が進めていた敵国のミサイル発射拠点などを直接たたく「敵基地攻撃能力」の保有と、5年間で43兆円を投じ軍事費をGDP(国内総生産)の2%へと倍増する大軍拡―「戦争国家づくり」路線はそのまま引き継がれている。

 一方で、石破政権は前政権の「原発の最大限活用」政策を踏襲し、2月18日、第7次エネルギー基本計画を閣議決定。現在電源構成比で8.5%の原発を再稼働と建て替えにより2040年度には2割程度にアップする方針を確定した。

 政府・与党の政治家は、軍拡と戦争遂行体制の整備を進める一方で、原発の再稼働や建て替えを進めることの矛盾を感じないのだろうか。

 敵基地攻撃能力については、日本のミサイル防衛システムでは迎撃が困難とされる極超音速ミサイルの開発に対処するために必要とされる。だが、日本がミサイル攻撃される事態になった時、長距離ミサイルによる「反撃」にどれだけの効果があるのだろうか。ロシアのウクライナ侵攻で明らかになったことの1つが原発を保有することの危険性・脆弱(ぜいじゃく)性だった。ロシア軍がザポリージャ原発に侵攻した際、ウクライナ軍は有効な反撃≠ェできずに占領を許した。それはそうだろう。下手に反撃してミサイルが撃ち込まれでもしたら、戦争どころではない。放射能被ばくから逃れるために原発を放置して避難せざるを得なくなる。

 福島原発事故以降、原発にはテロ対策施設の設置が義務づけられたが、これは航空機が衝突するようなテロ攻撃を受けても遠隔で原子炉を制御するためのものとされている。しかし、いま自公政権がやろうとしているのは中国や朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)を念頭においた戦争だ。原発にミサイルが撃ち込まれたらどうなるのか。原子炉が直撃され破壊されれば言うまでもなく、また周辺に着弾し電源喪失や冷却水の供給ができなくなってもメルトダウンは避けられない。

 こうした危惧が決して反原発派の邪推≠ナはないことも明らかになっている。英フィナンシャルタイムズが入手したロシア軍の機密文書には、NATO(北大西洋条約機構)との戦争が勃発し東アジアにまで拡大した場合の日本と韓国の攻撃目標が計160か所記されていた(1/1NHK)。日本では軍事基地以外に茨城県東海村の原子力施設が挙げられていた。ここにある東海第二原発が攻撃されたら、首都圏壊滅という大惨事もあり得ないことではないのだ。

 台湾有事≠煽り米国の戦争に参戦する準備を進めながら、ミサイル攻撃に弱い原発を最大限活用するのは、少しでも論理的に考えればまったくありえない話だ。原発は自国に向けられた核兵器≠ナもあることを訴え、原発の再稼働や建て替えを止めなくてはいけない。

  (U)

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