2025年03月14日 1862号
【民主主義的社会主義運動(MDS)集会基調/戦争勢力を追放 軍事費削減、市民生活改善を/負担はグローバル資本・富裕層に】
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日米両国で政権の顔ぶれが変わった。だが、これまで同様、グローバル資本のための政策に変わりはない。民主主義的社会主義運動(MDS)は3月1〜15日にかけ、各地で集会を開き、闘いの方針を示す。基調報告(要旨)を掲載する(まとめは編集部、3・4・6面に関連記事)。
トランプ大統領は何をしようというのか
第1に、連邦職員の大幅削減をはじめとする連邦政府支出の削減である。
これは、トランプ反対派を排除し、大企業、富裕層への大幅な減税を可能とするためである。トランプは、「政府効率化省(DOGE)による経費節減額の20%を国民に与え、20%を負債の返済に充てる」と述べた(2/19The New York Times)。1期目の「トランプ減税」を延長し、法人税21%を20%に引き下げ、石油・ガス生産者向けの大幅減税の方針も示している。
第2はAI(人工知能)、金融、エネルギー分野での規制緩和だ。前大統領バイデンの大統領令「AIが労働市場に与える影響に関する調査を義務付け」などを見直せと指示している。まさにグローバル資本の利益のための政策である。
第3にパレスチナ、ウクライナに対する態度である。トランプはノーベル平和賞について「私は(受賞に)価する」(2/5日本経済新聞)と言う。ガザ停戦介入はパレスチナ市民の基本的人権を守るのではなく、観光開発の道具にしようというのだ。ウクライナ停戦も援助削減、資源獲得が目的だ。ウクライナ市民の命を守ることなど考えていない。
第4に関税強化策である。米国産業を防衛し税収をあげるためであり、関税を取引材料として有利な貿易条件を獲得するためである。第5に排外主義的な移民政策である。市民・労働者の生活悪化、格差拡大の原因を移民と外国に求め、グローバル資本主義を免罪するものである。第6に各国への軍拡要求である。米国産兵器を買わせるため、まさにアメリカの軍需企業(ロッキード・マーチンなど)のための政策である。
トランプの政策は徹頭徹尾グローバル資本の利益を代弁、追求するものである。

石破首相は何をしよういうのか
2025年度予算案の特徴は軍拡、原発推進。大企業向けの半導体開発に膨大な援助をする一方で、市民には社会保障切り捨て、負担増をもたらすものである。
軍事費の伸びが突出している。社会保障費は削られ、高額医療費上限の引き上げをはじめ市民負担が増やされている。訪問介護報酬引き下げにより、訪問介護事業所が潰れていっている。社会保障、医療費の削減に対し、グローバル資本のための支出は確保する。エネルギー基本計画で原発推進を決め、半導体開発に30年度までに10兆円を援助する。

予算成立のためには野党の修正要求に応じざるをえない。ポイントは、国民民主党の「103万円の壁」解消と日本維新の会の高校教育費無償化である。
実現すべき要求だが、この程度では市民生活の根本的改善にはならない。物価上昇の下で賃金は上がらず、実質賃金は24年で0・2%減となっている。一方、超富裕層(全世帯の上位3%)が全金融資産の26%を保有している。大企業と富裕層が儲け、市民の生活は悪化。市民の不満は非常に高まっている。

MDSはどう闘うか
(1)パレスチナ、ウクライナで停戦を実現し、世界から戦争を追放する。
世界の市民にとって戦争をやめさせ、軍事費を減らすことが生活改善の最重要策である。
(2)東アジアの緊張緩和をつくる。
米日韓外相会談(2/15)で台湾への介入を表明した。自衛隊は外国軍と共同訓練を行い、アジア全域に介入しようとしている。MDSは日米韓台の市民の連帯で対抗する。反基地運動と連帯し、アジアから軍事緊張をなくすために闘う。ZHAP(ZENKO辺野古反基地プロジェクト)の第3次国際賛同署名を国内外で集める。
(3)軍拡をストップし、市民の命と暮らしを守る。
インフレの中、市民生活を守るために賃上げ、社会保障拡充、消費税減税が必要である。そのための財源は軍事費を削減すること、内部留保600兆円をも持つ大企業への法人税課税を強化すること、富裕層への所得税課税を強化することで調達できる。

OXFAM(オックスファム―貧困と不正を根絶するための持続的な支援・活動を展開する団体)によれば世界の人口の44%が貧困ライン以下で生活している。一方、上位1%の富裕層は世界の総資産の45%を所有。10人の大富豪は毎日1億ドル(約150億円)、資産を増加させている。
これがグローバル資本主義のもたらす格差である。この貧困格差に対する怒りは世界的に広がり、英国、フランス、ドイツで政権が揺らいでいる。この時、変革の方向をめぐって右派勢力が伸長している。彼らは格差、貧困の原因を移民政策にあるとし排外主義をあおり、グローバル資本主義を免罪し、グローバル資本の利益を擁護する。
グローバル資本との対決を通してしか、戦争を止めることも、生活破壊をくい止めることも、人権を確保することもできないのである。外国人であれ、高齢者であれ、その基本的人権を破壊することを認めてはならない。
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石破政権は国民民主党や日本維新の会を抱き込み、軍拡、社会保障切捨てを貫こうとしている。軍拡にあいまいな立憲民主党も取り込もうとしている。野党共闘においても共産党排除が進められようとしている。
すべての市民生活破壊の根本原因はグローバル資本にあることを明らかにしていかねばならない。これらの闘いを通じてグローバル資本を規制し、民主主義的社会主義の展望を訴え、広く市民の納得と支持を獲得しなければならない。 |
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