2025年03月14日 1862号

【イスラエル軍関係者に宿泊キャンセル依頼で不当解雇/声上げたジェロニモ・ゲレスさんに聞く/人として国際法を守りたいだけ】

 イスラエル国防軍(IDF)関係者であることがわかった予約希望者にキャンセルを依頼した京都市のホテル支配人が解雇された。不当解雇撤回を求め昨年11月に提訴した原告ジェロニモ・ヴェレ・ゲレスさんに、裁判にかける思いを聞いた。(2月27日)


国際法を守るために

 昨年6月、イスラエル軍関係者からホテルへ予約連絡がありました。イスラエルがガザで行っていることは国際法違反の行為ばかりで、国連、アムネスティ・インターナショナル、ヒューマン・ライツ・ウォッチから“戦争犯罪だ”という報告がたくさんありました。

 ホテル側として、国際法を破るリスクを負う必要はないと思い、キャンセルを依頼しました。国際法は守るべき法律です。だから国際法を破っている人たちを受け入れないのは当然だと思います。法律を守るための行動をとったのですから。

 ところが京都市は、私のとった行為が日本の旅館業法に抵触したという判断をしました。つまり国際法を守ろうとしたら、それは日本の旅館業法違反の行為にされたというわけです。

 多くのホテルは、ブッキング・ドットコム(Booking.com)の予約サイトを活用しています。そして、そのサイトのポリシーには、国際法を守らないといけないし、そういう努力をしないといけない、とあります。けれど、日本の旅館業法には国際法について何も触れられていません。

 私は「パレスチナの平和を求める会・京都」の皆さんと、昨年の10月7日に外務省と厚生労働省に申し入れに行き、この点について聞きました。

Q「旅館業法は、国際法を反映していますか?」

A「反映していません」

Q「日本政府もそれはわかっておられるわけですね?」

A「はい、わかっています」

Q「旅館業法に国際法を反映させるつもりはあるのですか?」

A「反映させることは、今のところ検討していません」

―これが回答でした。

解雇の背景に戦争犯罪

 裁判を通じて訴えたいことの1つ目は、私の解雇が不当であるということです。

 事件が起きてからも、私はずっと上司と相談しながら仕事をしてきました。けれど会社は、裁判で“(私が)また似たようなことをする危険性があるから解雇せざるを得なかった”と主張しています。全く違うし、正当な理由ではありません。

 2つ目に、私の解雇がなぜ起きたのかと言えば、それはイスラエルがガザでジェノサイド(大量殺戮)も含む多数の戦争犯罪をやっているから。そして、今でも戦争犯罪は続いていて、現在進行形だから。それが、私の行動に結びついた。だから、この裁判を通じてガザで起きている事実も伝え、広く訴えていきたい。

 3つ目は、ガザで起きている虐殺の事実を、歴史として残していきたい。

 私の1回目の陳述の時に、2024年6月当時にパレスチナで子どもと女性がどれぐらい殺されたのか、ガザがどれだけ破壊されたのかを話しています。これは国際法で禁じられている戦争犯罪行為だと。未来から見た時に“この時代の人たちは、何かをしようとしていたんだ”と、歴史に残したいと思っています。

ぜひ裁判のご支援を

 私は偽善者にはなりたくない。それが一番の思いです。私は、日本の社会に絶望はしていません。なぜなら、毎週土曜日に京都市役所前でパレスチナでの虐殺反対を訴えてデモをする人が150〜200人も集まっているから。

 次回の口頭弁論は3月13日(木)午前10時から京都地裁の203号法廷で行なわれます。ぜひ傍聴などのご支援をお願いします。

ジェロニモさん裁判

 ジェロニモさんは昨年6月、戦争犯罪を犯しているイスラエル国防軍の関係者である宿泊予約希望者本人に国際法を根拠にキャンセルを要請し、了解された。ところが、イスラエル大使館がとりあげネットなどが「国籍差別」キャンペーン。ホテル運営会社が問題視し、根拠のない配転や思想信条を侵害する誓約書を求めた上、7月に解雇した。不当な解雇権の濫用(らんよう)として撤回と従業員の地位確認を求め11月に提訴した。



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