2025年03月14日 1862号
【原発のない地球へ(17)/原発事故避難者の住まいの権利を確立しよう】
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福島第一原発事故からまもなく14年。「貯金を切り崩しながらの生活。どうやって生きていけばいいか不安でたまりません」。区域外避難者11名が闘っている“ 住まいの権利裁判”第12回弁論 (1/27東京地裁) の報告集会で当事者はこう訴えた。
相手は東電でも,みなし仮設住宅(国家公務員宿舎)の家主・国でもない。被災県でありながら、避難者を問答無用に追い出す福島県だ。「災害救助法の適用は終わり。県が国に頼んで斡旋した安い家賃での2年間の継続入居契約も終わった。出ていかないのは我がまま」と言わんばかりだ。
では行政の理不尽を正すべき司法はどうか。同様のケースで闘う“住宅追い出し裁判”では、福島地裁、仙台高裁とも、「住宅提供打ち切りは行政の裁量権の範囲、手続き上も瑕疵がない」として福島県の主張を追認した。これを受け福島県は、避難者の立ち退きの強制執行まで発動した。現在、最高裁第二小法廷に係属中だ。
「行き場がない自分たちは不法占拠者なのか。自分はなぜここにいるのか。好きで避難したのではないのに」と自問する避難者。そもそも避難は、福島第一原発が東日本大震災により壊れ、放射能がばらまかれたために起こったことのはずだ。大地震と大津波がくることは、予測されていた。壊れない堤防、海水の侵入しない非常用電源を作ることは急務だった。東京電力、国はそれを怠った。原発災害は人災なのだ。
しかし、当時も今も原発避難者を救済する法は自然災害を想定した「災害救助法」しかなく、“法の欠缺(けんけつ)”状態にあった。後に生まれた「子ども被災者支援法」も骨抜きにされ機能しなかった。
裁判の最大の争点は、原発被害者救済法の有無、法の欠缺を問うことにある。福島県は、そのことを全くスルーして、「災害救助法に基づいて対応したのであり問題ない。法の欠缺はない」と主張するだけで理由を示せない。災害救助法で足りるなら、行き場を失った避難者は存在していないはずだ。しかし、現行法に穴があり、そこからこぼれ落ちる者がいる場合、日本の法律の上位規範である国際人権法を運用しなければならない。原発事故避難者は「国内避難民に関する指導原則」の対象者であり、復興庁は「国内避難民の人権を保障するため、その支援の在り方等を示した文書で法的拘束力はないが、国際的な規範となる文書として周知するよう」にと各都道府県にも連絡している。そこでは公的住宅など代替措置をとらずに移動させることは禁じられている。
住宅裁判の当事者は少数であるが、避難にとって基本となる居住の問題であり、多くの被災者の真っ当な願いを代表した闘いである。それを「我がまま者」扱いする行政の狙いは、原発再稼働、時代錯誤な原発回帰にとって邪魔な存在だからである。(O)
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