2025年03月21日 1863号
【コラム 原発のない地球へ/いま時代を変える(18)/東電刑事裁判上告棄却/12年半を闘い抜いてきた私たちに敗北はない】
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すでに報道されているように、3月5日、東電旧経営陣3名が検察審査会の強制起訴議決を受けて起訴されていた東電刑事裁判で、最高裁は、3被告のうち公判途中で死去した勝俣恒久元会長を除く武藤栄、武黒一郎の両元副社長について、無罪とした1〜2審判決を維持し、検察官役の指定弁護士の上告を棄却した。
私は、2012年秋、福島県民だけに参加者を絞っての第一次告訴・告発からこの闘いに加わった。12年半もの間、闘い続けてきた当事者として無念の思いはある。しかし、少なくともこの告訴運動と、それに続く強制起訴裁判は3つの成果を残した。
第一に、政府、国会、東電、民間4つの事故調査委員会の調査報告書すべてを合わせたよりもはるかに多くの、埋もれていた事実と証拠を公開できたことだ。特に、刑事訴訟とほぼ同じ証拠を使って争われた東電株主代表訴訟での「13兆円の賠償判決」は、刑事裁判なくしてはあり得なかった。
第二に、政治的立場の違いを超えた大きな闘いとなったことだ。「賠償金目当て」などとバッシングされることを恐れて、民事訴訟に踏み切れなかった多くの福島県民がいた。東電関係の仕事をしているため、東電と闘いたくないという県民もいた。
刑事裁判は賠償目的の民事訴訟とは異なり、また事故原因を解明し、再発防止対策を取らせることは電力会社自身の利益にもなる。必然的に、立場の違いを超えた多くの人々の連帯を作り出した。
第三に、他の民事訴訟との共同を作り出す中から、最高裁の堕落・腐敗の実態を明らかにできたことだ。多くの最高裁判事が東京電力と密接な関係にあることが暴露され、最高裁の権威は完全に失墜した。
最高裁判事たちは、刑事責任の有力な証拠となるはずだった長期評価を、あらゆる手段を使って貶(おとし)めたが、それ以上に司法自身が深く傷ついた。
最後は、三浦裁判官が審理を辞退した結果、東電と密接な関係を有する判事が3人のうち2人を占めるという異常事態の中で棄却決定となった。最高裁が最後の最後でこんな醜態をさらすとは予想外だった。東電旧経営陣は、いわば“身内”によって免罪にされたに過ぎず、今回の無罪決定は、何の重みもない「吹けば飛ぶ程度のもの」と私は思っている。
東電刑事裁判における裁判所前行動等で、スピーチの機会があるたびに訴えてきたことがある。「私たちが何も悪いことをしていないという事実は、どんな判決であろうと変わることはない。この裁判は、私たちが勝つか、司法が盗まれるかのどちらかであり、私たちに敗北はない」ということである。
時に落ち込みそうになる自分自身を鼓舞するための“檄(げき)”のつもりだったが、まさか司法が東電によって「本当に盗まれている」とは12年半前には思ってもいなかった。司法はみずから自滅の道を選び、敗北したのである。 (水樹平和)
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