2025年03月21日 1863号
【みるよむ(725)/2025年3月1日配信/政治難民保護を放棄するイラク政府】
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中東各国では、政府の不正や人権侵害を批判する人びとへの弾圧が続いている。最近、イラク政府はクウェートからの政治難民を拘束して送り返すという措置を取った。1月、サナテレビはこの事件を報じた。
今回取り上げたのは、イラクの隣国クウェートの反体制派活動家のサルマン・アル・カリディさんだ。
カリディさんは、クウェート国内の人権抑圧や政府の腐敗などを告発してきた。「包囲網を打ち破れ 民衆の要求」と書いたプラカードを掲げ、路上で小型マイクを持って当局に抗議。自らの取り組みの映像をSNSで発信してきた。欧米でも日本でも、ごく普通に行われていることだ。
しかし、クウェートの支配者一族はそんなカリディさんを許さない。彼は何と11回も起訴され、計66年という実刑判決を受けている。その罪状は「クウェート首長を侮辱したこと、噂話を広めたこと」という。まるで大日本帝国憲法下の「不敬罪」だ。
カリディさんは、国際基準では当たり前の表現の自由行使を理由に、ほぼ一生投獄という重罪の判決を受け、イラクに政治難民として逃れて来たのだ。
難民を拘束し強制送還
イラク政府は、国際人道法からも国内の法律からも、カリディさんを保護しなければならない。ところが、政府はカリディさんの身柄を拘束してクウェートとの国境にあるアル・アブダリ国境検問所に移送し、クウェート側に引き渡した。
まさにクウェートの人権侵害に加担する非人道的不法行為だ。番組は事件を怒りをもって伝えている。
クウェートも、イラク同様に石油利権を握った政治家や支配層が自らの体制を批判する市民を弾圧している。サナテレビは政治難民を送り返す非人道的なイラク政府の姿を明らかにし、このような社会を変えようと訴えている。
(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)
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