2025年03月21日 1863号
【東電刑事裁判 最高裁上告棄却に抗議する/福島原発告訴団、刑事訴訟支援団などが声明】
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東京電力・旧経営陣の福島原発事故における刑事責任を問う東電刑事裁判で最高裁第二小法廷(岡村和美裁判長)は3月5日、強制起訴された武藤栄元副社長、武黒一郎元副社長を無罪とする1、2審の不当判決を支持し、検察官役の指定弁護士の上告を棄却した。かつてない原発過酷事故を起こした企業犯罪にもかかわらず、誰一人として刑事責任を問わない決定を行った。
3・11から14年。6・17最高裁判決(2022年)で原発事故の責任は“国”にはなしとされ、今また“東電”にも責任がないとされた。多くの市民が生命・財産・ふるさと・生業(なりわい)を失う未曾有の事態が生じたのに誰も責任をとらない、全く理不尽な決定だ。
また、疑惑の持たれる決定の強行だった。第二小法廷の4人の判事中2人が東電と利害関係を有する。「加害者」の立場に立つ者が裁判官の名で「加害者」を免罪したことになる。6・17最高裁判決を出した草野耕一判事は2週間後の退官が決まっていた。逆に最高裁判決に反対した三浦守判事はこの審理から外れ、3人の判事名で棄却。司法の独立を自らかなぐり捨てた暴挙で、到底許されない。
これに対し、反原発・反公害・人権獲得など闘う22団体で構成される617最高裁共同行動2025実行委員会は抗議声明を発し、6月16日の最高裁包囲行動(ヒューマンチェーン)をはじめとした共同行動への結集を呼びかけた。
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(以下は、福島原発告訴団、福島原発刑事訴訟支援団の抗議声明から抜粋)
裁判官3人全員一致として「業務上過失致死罪の成立に必要な予見可能性があったものと認定できず」「発電所の運転停止措置を講じるべき業務上の注意義務が認められない」とし、被告人を無罪とした原判決の判断は「不合理な点があるとはいえない」と最悪の決定をした。
私たちは、東京電力との深い関係にある草野耕一裁判官が裁判の公正を妨げると考え、事件の回避を求めてきたが、定年退官の直前の判断に強い憤りを禁じえない。一方で、最高裁6・17判決で少数意見を書いた三浦守裁判官が事件を回避したことにも驚いた。
この決定は、亡くなった被害者とその遺族をはじめ、万余の人々の生活と人生を壊した、日本最大の公害事件である福島第一原発事故の全ての被害者と被災者を踏みにじるものだ。さらに、人災事故を引き起こし、国民の生命と財産を窮地に陥れ、甚大な被害をもたらしながら、原子力発電事業者は何らの責任も問われず免責されるという法的前例をつくり、新たな原発事故を準備するもので決して許されるものではない。満腔の怒りをもって抗議する。
無念の死を遂げた被害者、その遺族、そして被災者の14年の想い、これまでの道のりの中で鬼籍に入られた多くの方々の想いを、決して忘れることはできない。
私たちは、兄弟姉妹関係の東電株主代表訴訟はじめ、皆さんと共に、原子力行政におもねる司法をも変えるためにも、あきらめずに活動を継続していく。
2025年3月6日
最高裁に直接抗議
3月11日、最高裁前で抗議アクション。「東電の刑事責任を追及する会」は「最高裁は『万が一にも事故を起こさない』『高度の注意義務』が原発事業者に課せられていることを明確にすべきだった」とする第二小法廷宛ての抗議文を事務局に手渡した。
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