2025年03月28日 1864号

【続・声上げたジェロニモ・ゲレスさんに聞く/「国際法は非常に危険な目に遭っている」/国際法を無視するイスラエルを変える闘い】

 イスラエル軍関係者の可能性から予約希望者にキャンセルを依頼したことを口実に不当解雇された京都市内のホテル元支配人ジェロニモ・ヴェレ・ゲレスさん。11月に京都地裁に提訴した裁判は3月13日、第2回口頭弁論が開かれた。本紙1862号に続き、提訴を決意させた国際法への思いを紹介する。(2月27日のインタビューより)


大切にしてきた思い

 私は、母が19歳、父が18歳の時にブラジルで生まれました。

 父が大学を卒業して仕事をするようになった時、一番大切にしていたのは教会の教えでした。でも、私はそれほど宗教には興味がなく、相手のことを考えることの大切さなどは、父と母が教えてくれたことが大きいと思います。

 私は、中学生までは成績が良かったけれど、高校生になると全然ダメでした。

 父の仕事の関係で、小学1年生から中学校までに5回転校し、高校生になってからもう1回転校しました。友達もしょっちゅう変わっていました。グループに入るために自分を合わせるということが好きではなく、いつも自分のままでいたい、と思っていました。クラスにはいろいろなグループがあったけれど、私が一番自立していたと思います。

守られていない国際法

 学校で勉強したことと現実がミスマッチしていると感じたことはないですか。

 私は、ブラジルの大学で日本語を専攻して、その後に国際法を学んだけれど、現実はイスラエルが国際法を無視しています。国連人権理事会からパレスチナの人権担当特別報告者に任命されたフランチェスカ・アルバネーゼ特別報告者が言っています。「国際法は非常に危険な目に遭っている。これが続くと無視されるようになる」と。

 私も非常に危険な目に遭っています。国際法があるのに、従わなくてもいいのですか?

 日本は非常にアメリカに、ひいてはイスラエルに影響されています。そうでなければ、京都市も旅館業法ではなく国際法をもっと守れただろうと思うのです。

 今回の件では、不思議なことがいっぱい起きました。

 ホテルに大量のメールや手紙が届く前に、イスラエル大使館は外務省の人に連絡し、外務省は厚生労働省の人に連絡したそうです。

 上川陽子外務大臣(当時)は、昨年6月21日の記者会見で「本事案につきましては、京都市による調査が行われ、旅館業法に基づく指導等が行われていると承知しているところであります」と回答しました。キャンセル依頼をしたわずか8日後のことです。

 なぜ、6部屋しかない京都の小さなホテルのことを話すのかと思います。

 覚えている方も多いと思いますが、昨年9月18日にイスラエルがトランシーバーに爆弾を仕掛けて、レバノンのヒズボラメンバーなどを殺害(死者37人、負傷者約3千人)。使われたのは、日本のメーカー(アイコム製)のものを偽装したトランシーバーでした。このことについて、外務大臣は一言も言っていません。

 でも、京都の小さなホテルについては記者会見する。おかしいじゃないですか。

 それほど日本政府はアメリカに影響されているのです。そして、アメリカに影響されているということは、イスラエルにも影響されているということなのです。

       《つづく》

ジェロニモさん裁判に広がる国際連帯

 第2回口頭弁論が3月13日に京都地裁で行われ、203号法廷の傍聴席(定員50名)は満席となった。

 この日は、被告の準備書面に対して、解雇の有効性を問う主に2点の反論を行った。(1)解雇事由の不特定及び出向命令の説明義務違反(2)「踏み絵」のごとく信条を問う「誓約書」に署名できなかったことを業務命令拒絶と決めつけ、「出向命令」を拒絶したことをもって解雇したことは、社会的相当性を欠く。

 閉廷後の報告集会では、ZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会)京都メンバーがパレスチナ人民防衛統一労働戦線事務局長サミール・アディルさん(イラク労働者共産党)の連帯メッセージ(京都地裁への要請文)を読み上げた。参加者は国際連帯の手が差し伸べられていることを、拍手で確認した。

 4月17日には弁論準備としてラウンドテーブル法廷(進行協議)が開かれる。

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