2025年03月28日 1864号
【未来への責任(415)/強制動員問題は終わらない】
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DEI(ダイバーシティ[多様性]、エクイティ[公平性]、インクルージョン[包括性])政策を憎悪し差別排外主義を煽るアメリカのトランプ政権の登場は、現在の世界的な「右傾化」を象徴している。このような世界的な状況はあらためて私たちに人種や民族やジェンダーなどあらゆる差別の根底にある植民地主義の克服が喫緊の課題であることを示している。
くしくも日本では今年が戦後80年、日韓条約締結から60年の節目の年にあたる。日本軍性奴隷、朝鮮人強制動員、朝鮮高校の無償化排除や、やまない在日朝鮮人へのヘイトクライムなど、日本社会における朝鮮植民地支配に起因する差別排外主義克服の取り組みを前進させなければならない。
朝鮮人強制動員問題は2018年韓国大法院が日本製鉄と三菱重工に強制動員された被害者に対し賠償を命じた判決の債務を韓国の財団が肩代わり(第三者弁済)することを2023年3月に韓国政府が示しいったん政治決着が図られた。そして、以後不二越などに出された大法院判決の原告らも含めて韓国政府の解決案を多くの原告が受け入れた。
一方、あくまでも判決の当事者である日本企業の謝罪も賠償もない解決案に納得できない原告遺族らは今も企業の直接の謝罪と賠償を求めて声を上げている。また、2018年の大法院判決以降も日本製鉄や三菱重工だけでなくDOWAホールディングス、JX金属、日本コークス、三菱マテリアル、西松建設、安藤ハザマ、住友金属鉱山、住石ホールディングスなど多くの日本企業に対する55件の裁判が提起され現在も係争中だ。強制動員問題はいまだ解決してはいない。
このような中、3月13日に強制動員問題の解決をめざす声明「戦争と植民地支配で傷つけられた人間の尊厳の回復を求めて〜戦後80年・日韓基本条約締結から60年を迎えて〜」が公表された。
4月11日には韓国から日本製鉄と三菱重工に強制動員された原告の遺族が来日、被告企業への申入れと強制動員問題の解決をめざす院内集会が開催される。
戦争中の朝鮮人や中国人に対する強制労働は、強制労働(ILO29号)条約違反の人権侵害であった。重大な人権侵害に対しては加害企業が加害の事実を認め被害者に謝罪・賠償を行うとともに再発防止の措置を講じるのが2005年の国連決議で示された国際人権法上の基本原則でもある。
国際基準に基づく強制動員問題の解決が植民地主義克服の第一歩となる。
(日本製鉄元徴用工裁判を支援する会 中田光信)
◆強制動員問題は終わったのか? 原告遺族は訴える4・11院内集会
▽4月11日(金)16時〜
▽衆院第一議員会館
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