2025年04月04日 1865号

【イスラエル停戦破棄に抗議/トランプ、ネタニヤフの「ガザ開発」計画/国際犯罪者を追いつめよう】

 パレスチナ・ガザ地区で停戦合意を破る行動を繰り返していたイスラエル軍は、3月18日、ついに空爆を再開し、3日間で700人以上を殺害した。停戦「仲介者」と自称する米国トランプ政権は全面的に支持を表明した。だが、パレスチナ人抹殺へと突き進むこの蛮行はますます国内外からの批判を浴びている。トランプ、ネタニヤフ両政権を追いつめ、恒久停戦を実現させなければならない。パレスチナ解放へ声をあげよう。

激化する民族浄化

 「ハマスが人質解放を繰り返し拒否し、米政府の提案を受け入れなかった」。これがイスラエル首相府が表明した戦闘再開の理由であり、米政府がイスラエルを支持した理由でもある。

 だが、「人質解放」は口実に過ぎない。停戦合意の第2段階は、イスラエル軍がガザから完全撤退すれば、「人質」全員が解放されることになっていた。イスラエルが撤退を拒み、第2段階に入れなかったのだ。

 ネタニヤフ政権は最初から「人質の解放」に関心はない。「人質になりそうな兵士は殺せ」が軍の命令(ハンニバル指令)で、民間人も同じ扱いだった。イスラエルは「停戦」中も民間人を殺害し、支援物資の搬入を許さず、ハマスが停戦破棄するのを待っていた。

 なぜ今、イスラエルは戦闘を激化させたのか。イスラエル国内での政治的危機があるからだ。「停戦合意」に不満だった極右政党「ユダヤの力」の党首ベングビールが政権離脱し、ネタニヤフ政権は少数与党となった。3月中に予算が成立しないと総選挙となり、ネタニヤフ再選は厳しい状況に陥る(3/20時事)。

 また、戦闘を再開した日はネタニヤフ汚職事件の本人審問の日でもあったが、戦闘再開で中断された。ネタニヤフ側近の汚職疑惑も持ち上がっていた。捜査にあたっている公安庁(シンベト)のトップ、バー長官解任を閣議で決めた(3/21)。戦時体制を維持することが、ネタニヤフ政権には必要になっていたのだ。

「大イスラエル」狙う

 政権維持のためだけに停戦を破棄したわけではない。ネタニヤフが「これまでの最大の支援者」と持ち上げる米大統領トランプの「ガザ所有」表明が極右シオニストを勢いづかせている。

 昨年5月、イスラエル首相府はガザ地区の復興計画「危機から繁栄へガザ地区変革計画」を公開した。「ガザ2035」と題するビジョンには、リゾートマンションやホテルなど高層ビルが建ち並ぶイメージ図もある(5/3エルサレムポスト)。だが、ガザには形ばかりの「自治」を認め、ヨルダン川西岸地区のように、軍事占領下に置くことにしている。

 この荒唐無稽な復興計画公表から9か月後にトランプの「ガザ・リゾート化」発言がでた。トランプは就任式当日(1/20)、前日に発効した停戦合意について「昨年5月段階でまとまっていたのにバイデンは決めきれなかった」と語っている(2/12ニューズウィーク日本版)。トランプの念頭には「ガザ2035」があったことは間違いない。

 ネタニヤフ政権はトランプ政権となら「ガザ2035」を実現できると考えた。停戦を理由に離脱したベングビールはトランプ構想を「ガザ問題の唯一の解決策。実現のためなら復帰する」と表明していたという。

 停戦破棄と「ガザ2035」はひと続きなのである。ガザ地区を廃墟にし、パレスチナ人を追放する計画は、地中海からヨルダン川までをイスラエル領とする「大イスラエル」を実現する第一歩なのだ。トランプ就任と同時にヨルダン川西岸地区の制圧作戦が激化したのもそのためである。

深まる国際的孤立

 トランプ、ネタニヤフは好き勝手にはできない。

 アラブ連盟の緊急首脳会議(3/4)は「パレスチナ人の移住はどんな形であれ国際法違反」とトランプ案を否定するガザ復興計画を採択した。トランプがパレスチナ人を受け入れるよう圧力をかけていたヨルダンやエジプトを含むアラブ22か国・地域は、ガザで仮設住宅に住み続けながら、近代的な住宅、インフラ、交通網などを再建する案をまとめた。総額530億ドル(約8兆円)。パレスチナ自治政府の下でガザ管理委員会が復興にあたる。ハマスも受け入れた。

 国際機関からのイスラエル批判も続いている。国連人権理事会の調査委員会が3月13日、イスラエルが性的暴力やジェンダーに基づく暴力をますます強め、妊産婦・生殖医療施設を体系的に破壊して「ジェノサイド行為」を続けていると改めて非難した。18日には国連人権高等弁務官事務所がヨルダン川西岸で続く入植の実態調査を公表、国際法違反と厳しく指摘している。

 イスラエルはますます国際的に孤立化していくことは間違いない。それに肩入れする米政府も同じだ。

国内外に広がる抗議

 イスラエル国内でも、ネタニヤフ政権の停戦破棄に対する抗議行動がおきている。3月19日、エルサレムの国会議事堂前で数千人が怒りの声をあげた。3月の世論調査では停戦支持が70%を超えている。

 米国では、コロンビア大学でガザ停戦を求める運動の先頭に立っていたマフムード・カリルが逮捕(3/9)されたことに抗議する全国行動が3月18日に取り組まれ、パレスチナ連帯行動への弾圧を非難する声が高まっていた。ガザ攻撃再開後の19日には、ウォール街トランプビルの前で抗議行動が行われた。4月5日には、ワシントンで「ジェノサイドをやめろ」大行動が、DSA(アメリカ民主主義的社会主義者)など多くの団体の呼びかけで行われる。

 英国でも22日、ロンドンでイスラエル大使館への抗議行動が行われた。日本でも各地で、イスラエルや米国、日本政府に対する抗議行動が取り組まれている。

 パレスチナ現地で闘うPPFS(パレスチナ人民闘争戦線)は「ファシスト占領軍がガザ住民の絶滅戦争を再開した」と非難し、「大量虐殺戦争をやめさせ、責任者を戦争犯罪人と処罰し、民間人を保護するよう」求めている。

 パレスチナBDS(ボイコット、投資引き揚げ、制裁)全国委員会は18日、各国政府に対しイスラエルへの制裁などを求める緊急行動を呼びかけた。イスラエル・アパルトヘイト週間の始まる21日には、ガザ地区の学生が発した声明「瓦礫から抵抗へ」を紹介し、アパルトヘイト体制解体に向けた共同闘争を呼びかけている。「諦める時ではない。さらに運動を強める時でなければならない」

 戦争犯罪人ネタニヤフやイスラエルの国際法違反に加担するな。全ての政府及び関係機関、企業が守るべき最低限のモラルだ。ネタニヤフ、トランプを徹底して追いつめよう。







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