2025年04月11日 1866号

【みるよむ(728)2025年3月22日配信/国会議員家族の特権―外交官パスポート支給】

 イラク国民議会は、国会議員の家族にも外交官パスポートを発給するという議決を行った。2025年1月、サナテレビは、特権を公然とつくりだし不平等を広げるこの問題について報道した。

 映像は、この外交官パスポート問題に対して「市民の間に怒りの波が広がっている」と報じている。

 外交官パスポートの所持者は、国際法で定められた外交特権が与えられている。このパスポートの所持者は外国で逮捕されない。ところが、イラクのように、国会議員の家族に外交官パスポートを一律に与えればどうなるか。何の根拠もなく「外交官」としての特権的な地位が保証される。仮に、そのような地位を利用して外国で密輸や詐欺などの犯罪を犯しても、逮捕されないことになる。

 これは、市民から見れば許しがたい特権だ。国会議員にワイロや汚職など腐敗がまん延するイラク社会で、市民が「正義と平等の原則に対する新たな違反」と憤るのは当然だ。

 サナテレビは、イラクの外交官パスポートの発行部数が3万5千冊に上ることを指摘する。イラク人口(約4500万人)の何倍もの日本(約1億2千万人)でも2万冊以下で、異常な発行部数といえる。

怒りの背後に生活苦

 こうした露骨な議会、政府の腐敗に対する怒りの噴出の背景に、「基本的な社会サービスの欠如と高い失業率に苦しむ市民の生活状況」がある。それは、自民党の「裏金」や石破首相の10万円商品券問題に対し、物価高と生活苦に苦しむ日本の市民に強い怒りが広がっているのと同じものだ。

 国会議員の家族に外交官パスポートの特権を与えるという象徴的な問題を通じて、サナテレビはこのような社会的不正義と、汚職と腐敗の政治を変えようと訴えている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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