2025年04月18日 1867号

【「停戦交渉」はポーズ 激化するジェノサイド/「自主退避」に追いやるイスラエル】

 ガザ停戦合意を踏みにじったイスラエルは、新たな条件をつけた「停戦提案」を出しながら、占領計画を進めている。ネタニヤフ政権はあくまでパレスチナ人の追放をやり遂げるつもりだ。「停戦」などまったく考えていない。

新たな占領計画

 米ニュースサイト・アクシオスは3月31日、イスラエル軍が今後2〜3週間でガザ地区の25%を占領する計画を進めていると報じた。イスラエル当局の中には「ガザからのパレスチナ人の『自主的退避』を実行するための一歩」と述べる者もいると伝えている。占領軍の撤退どころか、完全支配への策動をあからさまにしたのだ。

 イスラエルの占領計画が報道された31日に、イスラエル軍は最南部ラファ全域に避難命令を出した。大規模攻撃を仕掛ける構えだ。ネタニヤフはラファと南部の中心地ハンユニスの間に「モラグ回廊」と呼ぶ分離帯をつくり、占領軍が掌握したと発表した(4/2)。孤立するラファから住民が相次いで避難しているという。

 北部のガザ市と中部地区を隔てるように「ネツァリム回廊」がある。23年の戦闘開始直後につくられた。道路を含む5〜6`bの帯状の地帯に軍が駐留、中・南部への出撃を繰り返した。

 今回つくった「モラグ」も「ネツァリム」も2005年までガザに存在したユダヤ人入植地の名前だ。「回廊」設置は、かつて入植地の安全のためにガザ地区を分断するように道路をつくる「5本指計画」が蘇(よみがえ)った。ガザをわしづかみにするようだ。


避難先を爆撃

 イスラエル軍は北部で避難所となっていた小学校を空爆(4/3)。同日、南部でもイスラエル軍が指定した避難先「人道地域」を攻撃。多くの市民を殺した。直接的な殺りくだけではない。命の元である水や食糧、電気を断つことで大量虐殺を行おうとさえしている。

 現地で活動する「国境なき医師団」は危機的な状況を伝えている。「イスラエル軍はガザの人びとから電気を遮断し、燃料の搬入を妨げることで、水の供給を絶ち続けています。電気や燃料は、水ポンプの稼働を含む水インフラに必要な資源です」。水不足で多くの子どもたちに黄疸、下痢、皮膚疾患がまん延している。

 1月からの停戦合意期間でも、イスラエル軍は水や食糧、医薬品の搬入を妨害し続けてきた。避難場所もなければ、食糧もない状況を作り出し、「自主退避」以外の選択肢がないことを見せつけようとしている。

 ネタニヤフは密かに、対外諜報機関モサドに対しガザ住民の受け入れ先を探すよう指示を出したという(3/28アクシオス)。トランプが受け入れの圧力をかけたエジプトやヨルダンが拒否をしたころからだ。ソマリヤや南スーダン、インドネシアなどと交渉したとイスラエル当局者は認めている。

非暴力BDSの力を

 イスラエル軍のジェノサイドを非暴力の手段でどう止めるのか。ネタニヤフ政権を引きずりおろし、アパルトヘイト体制を解体するにはどうすればいいのか。

 国際的な批判の中で、イスラエル経済は大きなダメージ受けている。パレスチナBDS(ボイコット・投資引き揚げ・制裁)全国委員会は、新たなボイコット対象にマイクロソフト社を上げた。イスラエル軍にクラウドとAIサービスを提供しているからだ。グローバル資本が虐殺の共犯者であることを追及しよう。

 ネタニヤフの戦争政策は、イスラエル自体の存続を脅かすことになる。国際法を公然と踏みつけ、戦争犯罪を問われても素知らぬ顔をする反社会的集団≠放置していいわけがない。
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