2025年04月18日 1867号

【みるよむ(729)/2024年3月29日配信/基本的人権を侵害する法律制定/宗派主義、民族主義が支配する議会】

 イラク国会は市民の基本的人権を侵害する「個人身分法」などの制定を強行した。2月、サナテレビは議会の問題点とこの法律制定について報道した。

 イラク国民議会は最近3つの重要法を制定、改悪した。しかし、この国の法律は、市民の人権や生活の必要からではなく、イラク政治を牛耳るイスラム政治勢力や民族主義勢力の都合で決められている。

 そもそも、2003年の米軍イラク占領以降に実施されている議会選挙は、偽物の投票用紙がトラックで大量に持ち込まれるなどという不正選挙である。議席の枠は宗派や民族の利害で事前に決められ、イスラム教シーア派とスンニ派の勢力やクルド民族主義勢力の間で配分が割り当てられる。

 とてもまともな選挙とは言えず、投票率は当局発表でさえ40%程度。実際は20%を割ると言われる。

 今回制定された法律も、「個人身分法はシーア派イスラム政党が、一般恩赦法はスンニ派政党が要求し、財産回復法はクルド民族主義勢力が特にキルクーク市で要求したものだ」という。

男女平等否定の身分法

 個人身分法の改悪について見てみよう。今回の改悪で、イスラムの教義に基づくシャリア法の理念が導入された。そのために、女性の結婚可能年齢は9歳以上になってしまった。これは、少女を身体的精神的に支配し攻撃を加えるものだ。

 女性は学校にもまともに通えなくなる。男性が女性を支配し、女性の当たり前の人間らしい人生を奪ってしまう。根本的な人権破壊と言うべきだ。近代社会が築き上げてきた男女平等の理念や女性の地位を根本から否定してしまう。

 イスラム宗派や民族によって支配された議会が、未成年の女性に対する人権侵害を推進する。サナテレビはこのような議会制度、イラクの社会を変えようと訴えている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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