2025年04月25日 1868号

【コラム 原発のない地球へ(20)/福島事故14年の世論調査に見る市民の目】

 福島原発事故から14年経ったが、原発立地付近の町への帰還はほとんど進んでいない。人口回復率は、葛尾(かつらお)村30%、飯舘(いいたて)村25%、富岡町16%、浪江町11%で、原発立地の大熊町(8%、879人)、双葉町(3%、182人)は1割を切る。いずれの町も2020年以降横ばいで、放射線量が年間20_シーベルト以下の地域の避難指示を解除しても、この5年間帰還者を含む回復率は微増の状況。避難者は放射能による健康被害への不安やふるさと・コミュニティ崩壊の精神的苦痛を引きずったままだ。

 反原発・脱原発に取り組む人々は、政府や福島県の対応を見るにつけ「放射能の危険性はもうなくなったというのか」と危機感を抱く。しかし最近の世論調査は、多くの市民は事態を冷静に見ており、世論を味方につけて闘えることを示している。

 原発事故から14年の世論調査を共同通信が行った(全国250地点の18歳以上3000人を無作為抽出。1796人から3月3日までに回答)。廃炉作業の成り行きに対し「関心がある」が77%に上り、政府・東京電力の作業進捗について58%が「評価しない」と答えた。汚染水海洋放出による水産物への影響は、政府の安全キャンペーンのもとでも半数が「懸念している」。核ゴミの最終処分については、高レベルの放射能をガラス固化して深い岩盤に埋める処分計画に73%が「安全と思わない」と疑問視した。

 原発再稼働について市民の目は厳しい。83%が再び深刻な事故が起こる可能性を心配している。また、86%が「安全な住民避難ができるとは思えない」と答えた。将来の原発に関しては「今すぐ」「将来的に」を合わせて62%が原発ゼロを求め、一定数維持(30%)・積極的活用(6%)は計36%で大きく下回る。老朽原発の運転期間延長も「支持しない=67%」が「支持する=30%」を大きく上回った。

 そして、原発ゼロの理由に(2つまで回答)、福島のような事故が起こる恐れ(68%)、再生可能エネルギーで対応できる(31%)、戦争やテロで攻撃されるリスク(26%)を挙げている。真っ当な反応だ。

 他方、原発維持を選んだ理由は、電気が十分に賄えないからが80%と圧倒的に多い。明らかな誤解に基づく判断だ。地球温暖化対策のため(35%)、電気料金が安くなる(30%)などもあるが、これらは再エネ拡大とともに変わっていく選択だ。かつては多かった「地域の発展に役立つから」はわずか6%、金銭による原発誘導は通じにくくなっている。

 東電の運営する柏崎刈羽(かりわ)原発再稼働は、反対54%対賛成44%で半数を超える人が反対している。新潟県の地方紙アンケート(反対52.7%、賛成47.3%)、先の衆院選挙の得票割合(立憲54万票、自民・維新49万票)と同様で、県民投票が実施されれば反対が半数を超える可能性が大きい。

 反原発・脱原発運動が原発の危険さと再エネ拡大の意義をわかりやすくシンプルに訴え、この世論を味方につければ、政府を動かす大きな力になる。(Y)
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