2025年10月17日 1891号

【ガザ停戦 すぐさま命を救う行動を/パレスチナ解放への闘いをさらに】

 トランプ大統領のガザ20項目停戦案をハマスが受け入れ、イスラエル軍の爆撃はいったん止まった。支援物資が届き、「飢饉」の一層の深刻化は避けられる。米・イスラエルにガザ制圧作戦停止、「占領・併合否定」明記を含む合意に至らせたのは、世界の運動の成果だ。「パレスチナの人びととの連帯運動の勝利」とUWFPP(パレスチナ人民防衛統一労働者戦線)は声明(3面別掲)を発した。これをパレスチナ解放へとつなぐには、入植者植民地主義・アパルトヘイト国家イスラエルを追いつめるさらなる闘いが必要だ。国際連帯の闘いを一層強化しなければならない(10月8日)。

押し付けた停戦合意

 ハマス(イスラム抵抗運動)は「条件が満たされればイスラエル人捕虜全員を釈放することに同意する」とトランプ提案の一部を受け入れることを表明した。「パレスチナの国民的合意とアラブおよびイスラム諸国の支持に基づき、ガザ地区の行政をパレスチナの独立した団体に引き渡す」。ハマスは停戦を選んだ。

 イスラエル軍はガザ市を包囲し、「残っているのはハマスとその支援者だ」と総攻撃の態勢にあった。ガザ市民は、これまで何度も停戦協議がなされたが実現しなかった経験から、今回も悲観的だった。ハマス受け入れの報を聞き、「本当に戦争が終わったのか?」と歓迎した(10/4BBC)。

 戸惑ったのはネタニヤフ首相だ。ハマスが拒否することを想定し、攻撃のタイミングを計っていた。そこにトランプ大統領が「直ちにガザ攻撃を止めるべきだ」とSNSに発信した。ネタニヤフは停戦を受け入れざるを得なかった。

 全世界80億人の目の前で繰り返されているイスラエル軍の虐殺行為。戦闘はいったん止めることができた。餓死寸前の状態にある子どもたちをすぐさま救わねばならない。治療を受けられず絶命する重傷病者を救わなければならない。

世界の怒りの声

 ネタニヤフは直前まで「ガザ完全制圧」を公言していたが、「占領・併合しない」ことを認めざるを得なかった。それは、世界からの怒りの声が日々拡大しているからだ。いかに「テロとの戦い」と正当化をはかろうが、国連人権理事会が「ジェノサイド」と断罪。「パレスチナ国など認めない」と強がっても、8割以上の国連加盟国が「国家承認」した。市民の大規模な闘いにG7の英仏加さえも承認を余儀なくされたのだ。

 ネタニヤフが孤立してもなお強がっていられるのは米国の全面的な支持があるからだ。だが、トランプ自身が、戦争犯罪への加担との批判を気にせざるを得なくなっている。特に支持層であるMAGA(米国を再び偉大に)派の中でさえ、イスラエル批判が高まってきているのだ。暗殺されたトランプ支持の若手活動家チャーリー・カークは「ガザでの軍事行動は恐ろしい」とイスラエル批判を強めていた。MAGA派はイスラエル支持をめぐって亀裂が生じている(9/20日経)。

 世界の怒りの声がネタニヤフに停戦を押し付けた。「この怒りの最前線にあるのはイスラエル支援国における労働組合であり、大規模なストライキなどで支配者階級に直接的経済的損失を与えている」(9/30UWFPPサミール・アディル事務局長)。だからこそ今回の停戦合意を確実に進めさせるためにも闘いをさらに強めなければならない。

当事者抜きの「再建」策

 真っ先にすべきことはガザの人びとの命を救うことだ。食糧・医薬品をはじめ支援物資を必要なだけガザ全域に届ける国連機関等の活動を妨害させてはならない。医療機関を再開させ、電気・水道などインフラを復旧させ、パン工場を再建し、瓦礫撤去・道路再開を行い、生活できる条件を整える。以上のことはトランプ20項目提案の前半8項目までに書かれている。誠実に履行させることが必要だ。

 ネタニヤフは「全面協力する」と表明しているがいつ放棄するかわからない。極右勢力は占領軍の撤退やハマス構成員への「恩赦」などトランプ提案に不満の声を上げているからだ。

 トランプが8月に示した「最終停戦案」をハマスが受け入れを表明する直前のタイミングでカタールの事務所を爆撃した。9月9日のことだ。「戦闘停止、人質解放、占領軍撤退」の合意を何度も潰してきたのは、常にイスラエルだったことを忘れてはならない。

 だがトランプ提案は、停戦後の「ガザ再建」に多くの事項を当てている。今年2月に公表した「中東のリビエラ」に替わる開発計画を「ニュー・ガザ」プランとして9項目以降に入れた。停戦後のガザの統治はトランプが議長になる「平和理事会」が行う。湾岸諸国の「奇跡の都市」を参考に、開発構想、投資案「トランプ経済開発計画」を策定し、「特恵関税」措置を受ける「特別経済区」にするという。

 まさにガザを植民地扱いするものだ。パレスチナの主権は全く顧みていない。この「開発案」の作成にはパレスチナ側からは誰一人かかわっていない。「誰もガザから強制退去させられることはない」と提案にはあるが、軍事力は使わないが、資本の力は別だと言っているのだ。

国際連帯で正義実現を

 パレスチナ連帯の闘いは国際的に強まっている。

 欧州各地から救援物資を積んだ船団がガザをめざした。イスラエル軍は42隻を拿捕。スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリ、南アのネルソン・マンデラの孫マンドラ・マンデラら50か国470人以上の活動家を拘束した(10/2)。

 これに抗議する行動が世界各都市で起こっている。ダブリン、パリ、ジュネーブ、ブエノスアイレス、メキシコシティ、カラチなど。

 イタリアでは100以上の都市で、200万人以上が参加したストライキが行われた(10/3)。ストを呼びかけたイタリア労働総同盟(CGIL)委員長は「平和な未来を求める若者たちの並外れた、前例のない参加」があったと語っている(10/3THE TIMES OF ISRAEL)。

   *  *  *

 占領終結―パレスチナ解放にむけ、トランプ政権やネタニヤフ政権に好き勝手させない闘いをつくりだし、確実に前進している。

 11月来日予定のPPSF(パレスチナ人民闘争戦線)政治局員モハマド・アローシュさんとの連帯を深めよう。イスラエル軍事企業に製造ロボットを提供する日本企業ファナック要請をはじめ、「虐殺戦闘機F35を飛ばすな」アクションなど国際的共同行動を成功させよう。なによりも日本の新政権にイスラエルとの協力関係を断つよう迫ろう。

 今度こそ停戦の破壊、虐殺再開を許してはならない。正義なくして平和はない。占領軍の完全撤退、違法入植地の完全撤去が国際法に基づく正義の実現の第一歩である。パレスチナの解放実現まで闘いは終わらない。





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